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遺言書作成には費用がかかります。弁護士に依頼すると20~50万円が費用の相場ですが、自分1人で作成するとしたらいくらなのでしょうか? 相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

作成以外に発生する「遺言書の弁護士費用」

遺言書の作成サポートのほか、遺言書にまつわる弁護士費用にはどのようなものがあるのでしょうか? 作成以外にかかる主な弁護士報酬は、次のとおりです。

 

相談費用

(※写真はイメージです/PIXTA)
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遺言書の作成支援を受けるには、専門家との相性も重要となります。 そのため、いきなり依頼をするのではなく、まずは相談をしたうえで依頼をするかどうかを検討することが多いでしょう。弁護士への相談報酬は事務所によって異なるものの、おおむね1時間1万円程度です。

 

遺言執行費用

遺言書の執行とは、遺言者が亡くなった後で、遺言書の内容を実現することです。遺言書を執行する人を「遺言執行者」といい、遺言執行者は遺言書のなかであらかじめ指定しておくことができます。

 

遺言執行は遺言書で財産を渡す親族などを指定することもできますが、弁護士へ依頼することでより確実な執行が見込めるうえ、トラブル発生時の対応もスムーズとなるでしょう。

 

遺言執行を弁護士へ依頼する場合の報酬は、弁護士によってさまざまです。また、遺産総額や執行の内容によっても異なります。 一般的には、最低報酬を30万円から100万円程度としたうえで、執行対象の遺産総額の0.5%から2%程度の報酬とされることが多いでしょう。

遺言書作成を弁護士に依頼するメリット

(※写真はイメージです/PIXTA)
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遺言書の作成は、自分で行うことも可能です。では、遺言書の作成を弁護士に依頼した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか? 主なメリットは、次のとおりです。

 

無効になるリスクを大きく下げられる

1つ目にして最大のメリットは、遺言書が無効になるリスクを大きく引き下げられる点です。遺言書を自分で作成した場合、特に自筆証書遺言では、無効になってしまうリスクが小さくありません。たとえば、次のような自筆証書遺言は無効です。

 

・押印をしていない

 

・日付が「令和4年11月吉日」などの表記である

 

・夫婦連名で1枚の用紙で作成した

 

・本文をワープロ打ちで作成して署名だけ手書きをした

 

・長文を自分で書くことが難しいので子どもに代筆してもらった

 

また、たとえ文面には問題がなかったとしても、作成時点で重い認知症を発症しており遺言書を作成する能力がなかったなどとして、無効となるおそれもあります。

 

ほかにも、たとえば遺産を渡そうとした相手についての記載があいまいで手続きができないリスクや、不動産など遺産の表記が誤っており手続きできない可能性など、リスクは少なくありません。弁護士へ遺言書の作成支援を依頼することで、無効になるリスクを大きく下げることが可能となります。

 

相続トラブル予防のアドバイスが受けられる

遺言書の作成を弁護士へ依頼することで、相続トラブルを予防するためのアドバイスを受けることが可能となります。

 

たとえば、相続人が長男と二男の2名である場合において、「長男に全財産を相続させる」とする遺言書を作成すること自体は可能です。 しかし、この遺言書は二男の遺留分を侵害しており、相続が起きた後でトラブルとなる可能性があります。

 

遺留分とは、配偶者や子どもなど一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分です。そのため、「長男に全財産を相続させる」という内容の遺言書を遺した場合には、相続が起きた後で、二男から長男に対して遺留分侵害額請求がなされる可能性があります。

 

遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額を金銭で支払うよう請求することです。この請求をされた場合には、実際に長男は二男に対して遺留分相当の金銭を支払わなければなりません。 このように、遺留分を侵害した遺言書は、後のトラブルの原因となります。

 

もちろん、遺留分を理解しつつ、あえて長男に全財産を相続させるとの遺言書を遺すことも選択肢の1つです。しかし、その場合には、仮に二男から遺留分侵害額請求がされた場合に長男が金銭を支払うことができるよう、支払い原資を検討しておく必要があるでしょう。長男が相続する遺産の大半が自宅不動産や自社株など、簡単に換価できないものであれば、支払い原資の確保に苦労させてしまう可能性があるためです。

 

弁護士へ遺言書の作成支援をご依頼いただくことで相続トラブルのリスクを知ることができ、あらかじめ対策を講じることが可能となります。

 

遺言執行まで一貫して依頼できる

遺言書は作成時点がゴールではなく、相続が起きてから無事に遺言書が実現されて、はじめてその意味を成す書類です。そのため、遺言書を作成する際には、その遺言書を誰がどのようにして実現するのかということまで検討しておかなければなりません。弁護士へ遺言書の作成支援を依頼することで、遺言執行まで一貫して依頼することができるため、安心です。

 

なお、遺言執行者は必ずしも弁護士へ依頼しなければならないわけではなく、遺言書で財産を渡す親族などを指定することもできます。ただし、遺言執行に慣れていない人が執行をすることで手続きに不備が生じる可能性があるほか、親族である遺言執行者にとって望まない執行が放置されてしまうなど、トラブルとなるリスクもあるでしょう。

 

トラブルとなった際の対応がスムーズ

遺言書の執行に関して、トラブルとなるケースも存在します。たとえば、一部の相続人が遺言書の無効を主張して、訴訟を提起することなどです。弁護士が遺言執行者であれば、このような際の対応もスムーズです。また、弁護士が遺言執行者に就任することで、遺言書に納得がいかない相続人などが法的に根拠のない「いいがかり」をつけることの抑止力ともなるでしょう。

まとめ

弁護士へ依頼して公正証書遺言で遺言を作成すると、公証役場の手数料や弁護士報酬などの費用がかかります。 一方、自分1人で自筆証書遺言を作成すれば、費用はほとんどかかりません。しかし、いくら安価に遺言書が作成できたところで、遺言書が無効になったりトラブルの原因になったりすれば、悔やんでも悔やみきれないでしょう。そのため、遺言書の作成は、やはり弁護士などの専門家へ依頼して行うことをおすすめします。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
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堅田 勇気

Authense法律事務所

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

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