(※写真はイメージです/PIXTA)

相続が発生した際、「少しでも安く、トラブルを少なく済ませたい」と思うのは誰しも同じです。そこで今回は、元税務調査官で相続専門40年のベテラン税理士秋山清成氏がいくつかのモデルケースをもとに、相続時活用したい「特例」と相続税の計算方法についてみていきます。

相続税の計算方法は「3ステップ」

「相続税の基礎控除」は、相続税がかかるか、からないかの基準です。計算式は、「相続税の基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の数」です。

 

例えば亡くなった方の法定相続人が1人なら3600万円、2人なら4200万円、3人なら4800万円といった具合で、相続財産が基礎控除額以下の人は相続税の申告は必要ありません。相続財産が基礎控除額以上ある家族は相続税の申告をして納税をします。

 

相続税の計算は複雑で、テクニックによっては税金が安くなるので、相続専門の税理士に申告書作成の依頼をすることをお勧めしますが、自分でザックリ計算してみることも大事です。

 

[図表2]相続税の基礎控除額

 

〈モデルケース・山田家〉

家族構成:父親、母親、長男、長女
夫の財産:1億円

 

[図表3]モデルケース・山田家

 

ステップ1…正味の財産額を計算

故人の財産と債務、葬式費用を把握して、正味の財産額を出します。財産には、故人の現金、預貯金、土地、建物などの不動産、借地権などです。生命保険契約に関する権利なども相続財産になります。

 

故人が亡くなる3年以内に相続人が贈与を受けていたら、贈与を受けたお金も相続財産に含めます。財産が把握できたら、次は債務と葬式費用を把握しましょう。

 

債務は、いわゆる借入金です。また、未納の税金や車のローンなど故人が確実に返済や支払い、納税をするべきものが対象です。葬式費用は、故人の通夜の費用、葬式当日の費用です。戒名代なども葬式費用に入ります。

 

意外に思われるかもしれませんが、初七日や四十九日の費用は葬式費用には含まれません。また、香典返しも葬式費用に含まれません。なぜなら、もらった香典は故人の相続財産に含めないので、その代わりに香典返しも葬式費用にはならないということです。

 

参考までに、故人が亡くなってから相続人が購入した仏壇やお墓は、故人の債務にはなりません。購入予定があるのならば、亡くなる前に本人が購入するのがベストです。故人の預金も減り、仏壇やお墓は非課税なので、相続税の節税になります。

 

財産と債務、葬式費用が計算できたら、正味の財産額を計算しましょう。計算式は、「財産額−債務−葬式費用=正味の財産額」です。モデルケースの山田家は、亡くなった父親の財産が1億円、債務と葬式費用が1000万円なので、正味の財産額は9000万円となります。

 

[図表4]財産額−債務−葬式費用=正味の財産額

 

ステップ2…実際に相続税がかかる課税対象額を算出

正味の財産額から相続税の基礎控除を引いて、実際に相続税がかかる課税対象額を出します。山田家の場合、相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×3人=4800万円」です。正味の財産額9000万円から基礎控除4800万円を引いて、課税対象額は4200万円となりました。

 

[図表5]正味の財産額-基礎控除額=課税対象額

 

ステップ3…相続人全員分の合計相続税額を計算

相続税の計算をするには、最初に相続人全員分の合計相続税額を計算する必要があります。山田家には法定相続人が3人いるので、法定相続分の数字を使い、家族全体で支払う相続税の計算をします。相続税がかかる課税対象額4200万円に、各自の法定相続分をかけます。

 

母親:4200万円×1/2=2100万円
長男:4200万円×1/4=1050万円
長女:4200万円×1/4=1050万円

 

[図表6]相続税額の計算①

 

次に法定相続分で分けた金額に対し、相続税の速算表どおりに相続税の税率をかけて控除額を引きます。

 

母親:2100万円×15%-50万円=265万円

長男:1050万円×15%-50万円=107万5000円

長女:1050万円×15%-50万円=107万5000円

合計:480万円

 

[図表7]相続税の計算②

 

次ページ相続額に応じた「納税額の負担割合」はいくら?

※本連載は、秋山清成氏による著書『元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

秋山 清成

KADOKAWA

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