3――なぜ「地域の実情」に沿う必要があるのか?
では、なぜ「地域の実情」に沿う必要があるのでしょうか。その理由として、人口減少や高齢化の進行スピード、人員・資源の違いなどで地域差が大きく、国一律の対応が困難になっている点を指摘できます。
少し極端な例ですが、下記写真のようなコミュニティを見て、「一律の対応が可能」と思う人は恐らく皆無でしょう。実際の問題で言うと、自治体の人口や規模、年齢構成が違うし、都市部と地方では、医療・介護の事業所や専門職の数も異なります。
さらに今後、大都市部では高齢者人口の増加が予想される一方、地方では高齢者人口さえ減っている地域も散見されます。このため、「地域の実情」に沿った体制整備が必要であり、暮らしに身近な自治体の主体的な役割が求められます。
こうした筆者の見解については、様々な反論が有り得ます。たとえば、「国の責任の放棄であり、自治体に丸投げすれば、地域差が広がる」「地方分権なんて今頃、流行らない」といった指摘です。
しかし、写真のような違いに直面した時、こうした意見は説得力を持たなくなると思います。さらに、医療・介護など旧厚生省の政策は伝統的に国直轄ではなく、自治体に執行を委ねてきた経緯があり、厚生労働省の出先機関である厚生局に担わせるのは非現実的です*10。
傾聴に値する指摘として、「今後の人口減少を踏まえると、自治体としての機能が成り立たなくなるのでは」という意見が考えられそうです。確かに今後の人口減少を考えると、自治体単独での運営が困難になるケースも想定されるため、事務の広域化などは欠かせません。筆者自身としても「将来的に全国一律の三層構造(国―都道府県―市町村)の仕組みは難しくなる」と思っています。
ただ、どんなに機構を改革しても、医療・介護など住民の暮らしに身近な業務は誰かが担う必要があります。結局、「地域の実情」に応じた体制整備が求められる点に変わりはありません。
さらに、いくら行政機構を広域化しても、自治体内部の違いや実情を意識する必要があります。たとえば、「平成の大合併」で周辺市町村を編入した市町村では、役所の規模は大きくなった一方、コミュニティの差異に直面しているケースは少なくありません。合併していない市町村でも、昔ながらの宿場町や農村、高度成長期に整備された団地、ファミリー向けの団地などが併存するような場合、丁・番地単位に解析度を上げつつ、コミュニティの状況を把握する必要があります。
たとえば、弊社が立地している東京都千代田区で見ても、官庁やオフィス、マンション、商店が並んでいると思われるかもしれませんが、大通りを少し入ると民家は少なくないですし、弊社の周辺では、お祭りの時に番地単位の町会が活躍しています。こうした違いを踏まえつつ、「地域の実情」に沿った対応を講じられるのは自治体(医療は都道府県、介護は市町村)しかあり得ません。
*10:旧厚生省の行政が伝統的に分権的である点については、2020年7月20日拙稿「医療提供体制に対する「国の関与」が困難な2つの要因を考える」を参照。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
注目のセミナー情報
【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』
【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!