(写真はイメージです/PIXTA)

ワークエンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態として、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義されています。ニッセイ基礎研究所の村松容子氏がアンケート調査の結果を使い、どういった項目が、活力、熱意、没頭のそれぞれに影響があるのかを確認していきます。

3―分析結果

回帰結果を【表1】に示す。

 

有意水準5%を基準に結果をみると、(1)~(4)いずれに対しても関係があったのは「職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる」「自分の技能や知識を仕事で使うことが少ない*3」「会社や同僚の役に立ちたい」「上司のサポート」「自分が使えるキャリアアップのための研修や制度が整っている」「勤務先は、従業員の健康増進についての取り組みが熱心な方である」「業績で公平に評価されている」だった。

 

「人から感謝される仕事がしたい」は、「(1)仕事をしていると活力がみなぎる気がする」「(2)仕事にのめり込んでいる・夢中になってしまう」「(4)ワークエンゲージメント(合計)」とは関係があったが、「(3)職場での自分の役割に誇りを感じる」には有意な関係はなかったほか、「家庭生活に満足だ」は「(1)仕事をしていると活力がみなぎる気がする」「(3)職場での自分の役割に誇りを感じる」「(4)ワークエンゲージメント(合計)」とは関係があったが、「(2)仕事にのめり込んでいる・夢中になってしまう」と有意な関係はなかった。

 

「自分のペースで仕事ができる」「自分で仕事の順番・やり方を決めることができる」は、4つの指標いずれとも関係が認められなかった。

 

*3:係数がマイナスであるため、自分の技能や知識を仕事で使うことが多いと回答している人で、ワークエンゲージメントが高い。

4―おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所が行ったインターネット調査を使って、ワークエンゲージメント(活力、没頭、誇り)と、従業員の裁量を測る変数、職場環境等の変数との関係を重回帰分析によって行った。

 

結果は【表2】に示したとおり、自分自身の技能や知識を職場で発揮したいと考え、発揮できる環境であることや、それを、男女や年齢に関係なく公平に評価してもらえる環境は、活力、没頭、誇りのいずれにもプラスとなりうると考えられた。上司のサポートのほか、キャリアアップのための研修や制度のほか、健康へのサポートも、活力、没頭、誇りのいずれにもプラスとなりうると考えられた。

 

【表2】
【表2】

 

家庭生活への満足は、職場には関与しにくい可能性があるが、職場におけるサポートだけでなく、従業員の家庭における生活も充実することもプラスになると思われる。なお、家庭生活に満足していなくても仕事に没頭できる可能性があるようだ。

 

今回の結果で、「自分のペースで仕事ができる」「自分で仕事の順番・やり方を決めることができる」は、活力、没頭、誇りの各状態とは関係がなかった。自分のペースで仕事をしたり、自分でやり方を決めることは、相談のタイミングがなかったり、相談相手がいない状況も含むと考えられ、仕事の内容によっては難しく、従業員に不安をもたらすのかもしれない。仕事の内容によってもとらえ方が異なる可能性がある。

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年3月30日に公開したレポートを転載したものです。

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