盛岡の「町の本屋」の名物書店員が語る…「なんでもあり」で次々とイベントを仕掛けることの効用

盛岡の「町の本屋」の名物書店員が語る…「なんでもあり」で次々とイベントを仕掛けることの効用
(※写真はイメージです/PIXTA)

ネット注文で本がすぐに届く現代、「町の本屋」が生き残る術はあるのでしょうか。岩手県盛岡市の「さわや書店」は、全国的に有名になった「文庫X」をはじめ、各種イベント企画、オリジナル商品の開発等を通じて新たな存在意義を切り拓いています。本記事では、さわや書店の外商部兼商品管理部部長である栗澤順一氏が、著書『本屋、地元に生きる』(KADOKAWA)から、新時代の本屋・書店員のあり方について考察します。

「先輩の本棚」と「おいしい景色」

さわや書店の店頭を活用するかたちでコラボ的なフェアを開催した例もあります。

 

たとえば、若者の就職支援を行っている「ジョブカフェいわて」では「先輩の本棚」という企画が立てられました。第一線で活躍している人生の先輩から就職したての若者に向けて、読んでおいたほうがいい本を紹介してもらう企画です。

 

最初はガイド的なリーフレットを作るだけの予定でしたが、紹介された本を実際に手に取って見てみたいという意見が多く寄せられたことからさわや書店フェザン店でフェアを行うことになったのです。

 

フェザン店の改札口フロアの正面ディスプレイに展示をしたうえで、フェザン店では“先輩たちの推薦図書”を用意しました。デール・カーネギーの『人を動かす』といった定番本から人気コミックの『美味しんぼ』まで幅広いラインアップになりました。

 

公共性の高いフェアだったこともあり、マスコミにもずいぶん取り上げてもらい、売上げも伸びました。そのうえ、この企画に関係した企業のいくつかは新たな外商先に加えられ、先につなげていくこともできています。

 

似たパターンとしては「おいしい景色」フェアがありました。こちらは、地元の岩手めんこいテレビが制作した同名のローカル番組とのコラボ企画です。

 

映画監督の大友さんやブックデザイナーの名久井直子(なくいなおこ)さん、作家の木村紅美(きむらくみ)さんといった盛岡にゆかりのある著名人に地元の思い出の味を紹介してもらう番組がベースになっています。

 

紹介された食べもののパネルだけでなく、大友監督がメガホンを取った『るろうに剣心』の関連本や、名久井さんが表紙をデザインした『光待つ場所へ』(辻村深月(つじむらみづき)著・講談社文庫)や木村さんの著書『イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集』(KADOKAWA)などの文芸書を本店で売り出しました。

 

番組告知と本放送がそのまま宣伝にもなったうえ、ニュースでも取り上げられたので、成果は大きかったといえます。

 

めんこいテレビとはこの後も岩手が生んだ偉人、新渡戸稲造関連で同様のフェアを開催できています。継続性がもたせられているだけでなく、新しい客層を取り込むことにもつながったと感じています。

 

 

栗澤 順一

さわや書店

外商部兼商品管理部部長

 

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本屋、地元に生きる

本屋、地元に生きる

栗澤 順一

KADOKAWA

「待ちの本屋」から「使ってもらう本屋へ」――。今なすべきことは何か。 いずれ本屋は町から消えてしまうのか? 訪れるお客様を待つだけの商売はジリ貧のご時世。全国区の名物書店の外商員が手掛けたのは「本とのタッチポ…

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