盛岡の「小さな町の本屋」が日本全国を巻き込む「ムーブメント」を何度も起こせたワケ

盛岡の「小さな町の本屋」が日本全国を巻き込む「ムーブメント」を何度も起こせたワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

ネット注文で本がすぐに届く現代において、「町の本屋」が生き残る術はあるのでしょうか。岩手県盛岡市の名物書店「さわや書店」の外商部兼商品管理部部長として新聞の書評執筆、ラジオ出演、イベント企画、オリジナル醤油の開発等を通じて新たな収益源を切り拓き、地域での存在意義を創り出している栗澤順一氏が、著書『本屋、地元に生きる』(KADOKAWA)から、新時代における本屋・書店員のあり方について考察します。

「返品率の抑制」という業界の課題

仕掛けてうまくいかないことは少なくなく、その失敗の代償は決して小さなものではありません。

 

以前はまだ、大量に仕入れて、残ってしまったとしてもそれなりの数を返品できたのですが、近年はそれがずいぶんやりにくくなりました。

 

まず大量に仕入れるのが難しくなっています。5冊仕入れて4冊返品したというようなケースでも、販売会社から「これはどういうことですか?」と問い合わせが入ることが増えてきました。

 

以前はそこまで厳しくはなかったとはいえ、それに近い重圧を受けながら田口さんたちは仕掛けを続けていたのでした。

 

現在、少し規模の大きい展開をしたいと思っても、勝算があることを示したうえで想定しているほど売れなかったときにはどうするか、といったことまで説明できなければ、販売会社にもなかなか納得してもらえません。

 

返品率の抑制は業界全体の大きな課題になっていて、大がかりな仕掛け販売をするのは難しくなっているのです。

 

こちらとしては「10回仕掛けてそのうち1回が当たればいい」という感覚であっても、販売会社の側では「仕掛け販売をするために大量に仕入れるのであれば、当たる確率をもっと上げてほしい」というような話になります。

 

“売れるものだけを注文してほしい”というのが販売会社の考え方なのに対して、こちらとしては売れるものを必死に探して、つくりだそうとしているのです。

 

どちらが良いか悪いか、ではありません。そもそもの発想が正反対のところでせめぎ合いつつ、売り場を作っているのが現状なのです。

 

 

栗澤 順一

さわや書店

外商部兼商品管理部部長

 

本屋、地元に生きる

本屋、地元に生きる

栗澤 順一

KADOKAWA

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