盛岡の「小さな町の本屋」が日本全国を巻き込む「ムーブメント」を何度も起こせたワケ

盛岡の「小さな町の本屋」が日本全国を巻き込む「ムーブメント」を何度も起こせたワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

ネット注文で本がすぐに届く現代において、「町の本屋」が生き残る術はあるのでしょうか。岩手県盛岡市の名物書店「さわや書店」の外商部兼商品管理部部長として新聞の書評執筆、ラジオ出演、イベント企画、オリジナル醤油の開発等を通じて新たな収益源を切り拓き、地域での存在意義を創り出している栗澤順一氏が、著書『本屋、地元に生きる』(KADOKAWA)から、新時代における本屋・書店員のあり方について考察します。

「文庫X」に続いた企画「帯1グランプリ」

全国に広がって話題性が高まったメリットもありました。この頃、私は異動で外商部の所属になっていました。訪問先で、文庫Xの話になることが多かったので、営業的にも利用していくことができたのです。

 

「文庫X」のあとも田口さんや長江さんは仕掛けを続けました。

 

長江さんは「文庫X」に続く第二弾企画として「帯1グランプリ」を展開しています。タイトルや著者名を隠して、いろいろな文庫の帯だけを見せて販売する手法でした。「文庫X」ほどの爆発力はなくても、マスコミに取り上げてもらい、それなりの話題になりました。

 

この頃のフェザン店では“常に何かをやっている”ということが代名詞のようにもなっていました。

 

毎回、ホームランを打つことはできなくても、間隔を空けずにヒットを打ち続けることをみずからに課していたのです。

POPを作る難しさ

企画によって本を売り出そうとしても、当たり外れはやはり出ます。ヒットしたものがあれば、そこにばかり目がいきますが、POPなどを作っても、反応らしい反応がないまま終わったものも多かったのが現実です。

 

ヒットにつながらなかったPOPにしても、それを作るためにはそれなりの労力が必要なのは言うまでもありません。

 

1冊の本を読むたびにひとつのPOPを作るわけではなく、何冊もの本を読んだなかから店で勧めたいと思える本を選んでいます。

 

コミックなら1冊1時間かけずに読めるものが多くても、小説だと1冊3時間とか5時間、ページ数が多いものなら10時間以上かかることもあります。

 

10冊の著書をもつ作家の1冊をPOPにしようと考えたときには、対象の1冊だけではなく10冊すべてを読む必要も出てくるので大変です。その作家だけでなく、似た系統の小説を書いているほかの作家の作品と比較しようとすれば、読むべき本はどんどん増えていきます。

 

また、POPを作成する際にも、頭の中では幾通りものアイデアを絞り出し、そのなかから自信がもてるものを選ぶようにしています。

 

そう考えてみれば、松本さんや長江さん、田口さんはものすごい時間をかけて本を読み、コピーを考え続けていたのがわかります。毎日の筋トレのように地道な努力を続けていたということです。

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本屋、地元に生きる

本屋、地元に生きる

栗澤 順一

KADOKAWA

「待ちの本屋」から「使ってもらう本屋へ」――。今なすべきことは何か。 いずれ本屋は町から消えてしまうのか? 訪れるお客様を待つだけの商売はジリ貧のご時世。全国区の名物書店の外商員が手掛けたのは「本とのタッチポ…

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