コロナによって実感した「大切なもの」とは
きれいごとを言いたいわけではなく、それがビジネスにつながっていきます。
こうしたところにこそ書店が生き残っていく道筋が見出せるのではないかとも考えています。
本屋としての本業とはいえないようなことをしていて、知り合った人がお客さんになってくれることもあります。ネット書店に注文すればすぐに届くような本をさわや書店で注文してくれる人は少なくありません。
「うちには在庫がないので取り寄せになりますよ」と返しても、「それでいいので届いたら教えてほしい」と言ってくれます。
一度の注文の売上げは大きくなくても、注文してくれるお客さんが増えていけば、まとまった売上げになります。コロナ2年目の2021年にしても、経営が好転する要因などはなかったにもかかわらず、売上げは復調傾向です。
それは、こうした積み重ねがあったからだともいえるのです。
「今後はますます人とのつながりが大切になっていくのだろうな」ということは、コロナがあったからこそ実感できたことです。
これから自分に何ができるのか?
個人の力でやれることなどはしれているのかもしれません。
とはいえ、やろうと思えばどんなことでもできます。
私は書店員になる前、ブラック企業としかいいようのない広告代理店で朝から晩まで働き続けていました。二度とその頃には戻りたくはありません。
しかし、当時の社長から聞かされた忘れられない言葉があります。
「食品に関する広告を考えるときには、吐くまでそれを食べろ。文具であるなら壊れるまで使え。車であるなら、もう嫌だというまで乗り続けろ。そうすることではじめて生きた言葉をつくることができるんだ」
ブラック企業だからこそ口にできたことなのかもしれません。ですが、限界まで商品(仕事)に向き合うべきだということは業種を問わずに通じる教訓です。
もっとやれることがあるのではないか?
簡単に妥協はしていないか?
そう考えてみたなら、これでもういいと納得できるポイントなどはなくなります。
まだまだやれることはある。
やらなければならない。
そう考えながら私は、日々、あちらこちらを駆けずり回っています。
書店員の姿らしくないと思われるかもしれませんが、私自身はこれがこれからの書店員の姿ではないのかという気がしています。
書店員が汗を流し続けていてこそ、本屋は存続できるのではないかと思うのです。
栗澤 順一
さわや書店
外商部兼商品管理部部長
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