ネット注文で本が買える時代…名物書店員がコロナ禍のなかで見出した「町の本屋」が生き残る道とは

ネット注文で本が買える時代…名物書店員がコロナ禍のなかで見出した「町の本屋」が生き残る道とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

ネット注文で本がすぐに届く現代において、「町の本屋」が生き残る術はあるのでしょうか。岩手県盛岡市の名物書店「さわや書店」の外商部兼商品管理部部長として新聞の書評執筆、ラジオ出演、イベント企画、オリジナル醤油の開発等を通じて新たな収益源を切り拓き、地域での存在意義を創り出している栗澤順一氏が、著書『本屋、地元に生きる』(KADOKAWA)から、新時代における本屋・書店員のあり方について考察します。

これまで通りでは書店に先がないのではという懸念

感染者数が増加した初期には、イベントなどもまったく開催することができなくなりました。イベントは、書店にとって本業とはいえません。

 

しかし、実をいうと私は「イベント担当」ともいえる顔をもっていて、自分が関わったイベントで出張販売することが業務の柱のひとつになっていたのです。

 

感染拡大前には、年間25回前後、イベントでの出張販売をしていたのに、感染が拡大した2020年には4回になったのだから深刻でした。

 

2020年の後半になってから地元のイベント会社主催でウェビナーなどを開催するようになり、2021年に入ってから少しずつイベントを行えるようになっていきました。

 

時間をかけながら以前のような状況に戻ろうとしています。それでも感染拡大初期の頃の書店は閉塞感が強くなっていたのは間違いないことでした。

 

書店といえば“お客さんを待つ店”というイメージが強いのだと思います。しかし、みずから何も動かず、ただじっとしているだけでは、地域ごとにある書店はシュリンクしていく一方です。

 

コロナ禍によって書店の危機意識はいっそう強くなりました。これまでどおりのやり方をしていてはどうにもならないと感じている人は決して少なくはないはずです。

 

イベントの開催といったことに限らず、何かのアクションを起こしていかなければ先がないのではないか。

 

たとえば私は、各種イベントの開催を増やそうとしているだけでなく、「岩手県内から無書店地域をなくす」、「これまでにはなかった新しいかたちの本の循環システムを実現させる」という目標を掲げています。

 

思うように進められずにいる企画もある一方、すでに動き出しているプロジェクトもあります。

 

私の場合、「これをやればビジネスになるのか? 利益になるのか?」という観点から行動の指針を立てているわけではありません。可能性があることなら、とにかくやってみる。そういうスタンスに立って仕事をしています。

 

今現在、店舗勤務ではなく外商部所属になっている私は、およそ書店員らしからぬことを日々行うようになりました。

 

イベントに関していえば、さわや書店が開催するイベントを仕切るだけでなく、盛岡市内の公共機関や企業が主催するイベントのコーディネートまでも引き受けるようになりました。

 

新聞に書評を書いたり、ラジオに出演したりもしています。

 

醤油の商品開発に携わったこともあります。その醤油は、さわや書店の店頭で販売しました。

 

書店員がどうして醤油の開発をして、書店の店頭で販売しているのか!? と驚かれた人もいるかもしれません。私にしても、当たり前のこととして醤油の開発に関わったわけではありません。

 

自分のやっていくことに枠組みをつくらず、どんなことでも敬遠しないでやってきた結果としてのことなのです。

 

そういう姿勢でやっていることによって広がっていくのが人の縁です。

 

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本屋、地元に生きる

本屋、地元に生きる

栗澤 順一

KADOKAWA

「待ちの本屋」から「使ってもらう本屋へ」――。今なすべきことは何か。 いずれ本屋は町から消えてしまうのか? 訪れるお客様を待つだけの商売はジリ貧のご時世。全国区の名物書店の外商員が手掛けたのは「本とのタッチポ…

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