職場に「置きサプリメント」?「置き入浴剤」まで…。イマドキの職場の健康対策、その効果は?

職場に「置きサプリメント」?「置き入浴剤」まで…。イマドキの職場の健康対策、その効果は?
置き薬は長く続いてきた。

企業が従業員の健康を気遣い、手厚い福利厚生を設けたり、デジタルデバイスを利用して体調を管理させたりする事例が相次いでいる。少子・高齢化を背景とした人手不足が深刻となっていることや新型コロナウイルスの感染拡大などが背景にある。国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)では、「すべての人に健康と福祉を(目標3)」、「働きがいも経済成長も(目標8)」を掲げている。企業は自社のブランディングの一環としても従業員の健康サポートを充実し、目標を達成しようとしている。この連載では、全国で法人向けの出張マッサージサービスを手掛ける株式会社イーヤス(名古屋市)の遠藤基平社長が、その経験をもとに「健康SDGs」を実践する企業を紹介し、その意義を具体的に解説する。

 

「富山の薬売り」「富山の置き薬」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。個人や法人の事業所に無料で備え付けの薬箱を置いてもらい、使った分だけ定期的に訪問するスタッフが集金をするという方法です。17世紀にはじまった伝統的な商法ですが、最近は従業員の健康を守るため、この「備え付け」の手法を活用する企業が相次いでいます。

 

「置きスムージー」、「置き入浴剤」など健康関連食品やグッズなどを職場に備え、気軽に使えるようにしています。従業員の健康を守るための工夫が欠勤率の低下や残業時間の減少につながっているという企業も出始めています。

「朝食抜き」「野菜不足」を補完する職場の「置きスムージー」

IT(情報通信)企業のR社は、2019年にオフィス内に野菜やフルーツを使ったスムージーを置き、自由に飲むことができるサービスを導入しました。健康に関する社内ヒアリングを実施したところ、朝食をとらないで出社してくる従業員が多いことがわかったためです。昼食時の野菜の摂取が少ないことも判明しました。

 

同社は健康経営に向けて最も改善するべき課題の1つが「食(栄養)」だと判断。従業員の食生活を無理なく改善するにはどうすれば良いかを検討し、オフィスで気軽にスムージーを飲める環境を整えることにしました。導入半年後の社内アンケートでは、「朝食代わりに利用している」「飲み物の質に気を遣うようになった」といったという回答がそれぞれ10%程度に達したそうです。

 

スムージーを備え付ける試みも。
スムージーを備え付ける試みも。

「置きサプリメント」を安価に提供、生産性向上も?

福利厚生の一環としてオフィスに風邪薬や解熱剤、胃薬、湿布、かゆみ止めなどの配置薬があることは珍しくありません。従業員が職場で急に体調が悪くなった場合、すぐに最低限の対応をできるようにするためです。

 

最近では配置薬に加えて、サプリメントなど栄養補助食品をオフィスに備える企業も出始めています。製造小売業のO社は2020年から、「置きサプリメント」を導入しています。サプリメントは健康食品関連の企業から提供してもらっているそうです。

 

同社ではストレスチェックをしたところ、「ストレスを感じている」という社員が多かったそうです。体調不良を訴えるスタッフも少なくなく、偏った食事や栄養不足なども原因の1つだとみられました。このため同社は、従業員の食生活の改善策として食堂に「置きサプリ」を導入しました。

 

置きサプリは、「二日酔い対策」「カロリーケア」「ストレス緩和」「ビタミン補給」などさまざまな種類があり、一袋当たり数十円と手を出しやすい金額です。社員は必要に応じて購入でき、自分で手軽に健康対策ができます。置きサプリの導入後は、欠勤率の低下がみられるそうです。サプリとの相関関係があるのかは明確にはわかりませんが、仕事の効率も良くなり、売上高は前年比10%ずつ増加を続けています。

 

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