昨年2月、東北部ナコーンパノム県にある、低水位となったメコン川。(『Bangkok Post』より)

タイの政治・経済・金融に関する情報を中心に取り扱う現地メディア『Bangkok Post』より翻訳・編集してお伝えする。

タイとラオスの漁村はすでにゴーストタウン化…

再生可能エネルギー容量を増やし、石炭への依存度を下げようと計画している中国は、1995年以来、メコン川に高さ100メートルを超える5つのメガダムを含む12基近くのダムを建設してきた。

 

中国はまた、メコン川に流れ込む支流に少なくとも95基の水力発電ダムを建設している。さらに数十基の建設が中国で計画されており、中国はメコン川下流域の他のダムにも資金を供給している。

 

タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムのメコン川下流域諸国からなる政府間組織「メコン川委員会(MRC)」によると、チベット高原と中国・ミャンマーのメコン川上流域にある水力発電ダムからのエネルギーは、年間約40億米ドル(約5,306億8,800万円)分生み出されていると推測されている。

 

2021年2月19日、カンボジア・プノンペンのメコン川で見られる、漁師のボートの集団。(写真:ロイター)
2021年2月19日、カンボジア・プノンペンのメコン川で見られる、漁師のボートの集団。(写真:ロイター)

 

しかし、メコン川流域で計画されているダムのすべてが開発された場合、川の土砂量のほぼすべてが上流に滞留し、この地域に住む数百万人の主要な食料源である米の栽培に影響を与える可能性がある、と様々な研究により推測されている。

 

さらに、ダムによって水流が変化し、魚の移動が妨げられることによるメコン川の漁業の衰退は、2040年までに230億米ドル(約3兆494億900万円)近く、森林、湿地、マングローブの損失は最大で1,450億米ドル(約19兆2,284億5,000万円)に上るとMRCは予測している。

 

米国を拠点とするスティムソン・センターでエネルギー、水、持続可能性プログラムを指揮するブライアン・アイラー氏は、「チエンコーンを含め、ダムに最も近い場所に住むコミュニティが最も大きな打撃を受けている」と述べた。

 

乾季に水力発電のために貯水池から放出される水量は、「自然流の2倍から3倍」にもなる一方、雨季には制限がかかることによって水量が半分以下になることもある。

 

「この影響により、タイとラオスの国境沿いの漁村はゴーストタウン化している」という。

 

「これらのコミュニティには、適応のための選択肢がほとんど残されていない。高齢者は、これまでの限られた生計以外の選択肢に対応できず、若い人は移住や別の生計を選ぶかもしれないが、そのためにはそれなりのリスクが伴う」(アイラー氏)

 

こうした懸念に対して、メコン川委員会事務局(MRC)は、「MRCは本件において、農業や地域社会に影響を与える可能性のある、河川流量や水質の変化を監視している」と述べた。

 

「MRCは、水力発電事業のリスクを管理し悪影響を軽減するために、ダムの設計、建設、運用に関する科学的、技術的な指導とガイドラインを提供する」と、電子メールでコメントを発表した。

 

しかし、ある非営利団体は、「MRCは地元コミュニティと協議しておらず、中国がダム建設に乗り出して以来、より頻繁かつ激化している洪水や干ばつに対する責任を同国に追及できていない」と指摘する。

 

2019年から2021年にかけての干ばつで、中国のダムが大量の水をせき止め、メコン川の水位が記録的に低下し、干ばつ状態を悪化させたことが、スティムソン・センターと米国に拠点を置く衛星監視活動「アイズ・オン・アース」の調査によって明らかとなった。中国はこれらの調査結果に対し、「降雨量が少なかったのだ」と反論し、2020年にはMRCと協定を結び、自国部分の流量について通年のデータを共有することとなった。

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この記事は、GGOが提携するタイのメディア『Bangkok Post』が2022年3月21日に掲載した記事「China's Mekong dams turn Thai fishing villages into 'ghost towns'」を翻訳・編集したものです。

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