ケース別のチェックすべき具体的な項目
売掛金・短期貸付金・長期貸付金に不良資産が計上されているケースでは、勘定科目明細に、いつも同じ先が同金額で計上されていないかをチェックします。
買掛金については一般的に粉飾をすることはないと考えがちですが、買掛金を一部計上しない、つまり仕入れを過少計上して利益を出す粉飾ができます。
この粉飾は、翌事業年度に支払いが発生しますから、一回限りの粉飾となり、いつまでも続けられる売掛金の粉飾との違いがあります。
買掛金の粉飾は利益を平準化するために行われます。
例えば、今期は1,000万円の赤字になりそうですが、来期において3,000万円の黒字が見込まれる場合に、今期決算において買掛金2,000万円の計上漏れの粉飾を行います。そうすると今期は▲1,000万円(赤字分)+2,000万円(買掛金計上漏れによる粉飾分)で1,000万円の黒字となります。
来期は、3,000万円(黒字見込分)-2,000万円(粉飾による買掛金計上分)で1,000万円の黒字となり、2期連続黒字を計上できるというわけです。このように費用を計上するタイミングを一部ずらすことで利益操作ができます。
こうした粉飾を見破るには、仕入債務回転期間を算出し同業同規模他社平均と比較します。仕入債務回転期間(回転日数)は、仕入債務が売上高の何日分あるかを示すもので、「仕入債務÷(売上原価÷365)」で算出できます。その異常値がないかを確認するほか、内訳書を前期と比較してみて、仕入債務の明細に違和感がないかをみることで発見できます。
内容のわかりづらい勘定、すなわち仮払金、前渡金、前受金などが多額にある決算書も気をつけなければなりません。その内容を調べてそれがすぐに現金化できないものであれば粉飾が疑われます。
減価償却未計上、定率法から定額法に変更などによる減価償却費の操作については、金融機関の行職員は皆理解していることなので、それが粉飾と言えるかどうかは微妙です。
翌期の売上を今期に計上するといった売上高の架空計上、今期発生している費用を、翌期に繰り延べるといった費用の粉飾は、売上高利益率の比率が跳ね上がることで見抜きます。