(※写真はイメージです/PIXTA)

金融機関は、融資をするか否かの判断において取引先企業をどのように査定しているのでしょうか。金融機関で数多くの企業の融資業務に携わった経験をもち現在は行政書士として活躍する黒木正人氏が、著書『企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント』(ビジネス教育出版社)より、わかりやすく整理して解説します。

ポストコロナにおける経営改善計画

◆(5)経営改善計画とは

債務者区分を「その他要注意先」にとどめるための経営改善計画とは、金融庁監督指針における「実抜計画」(実現可能性の高い抜本的な経営再建計画)を策定する必要があります。

 

また「実抜計画」を策定していない場合であっても、債務者が中小企業であって、かつ、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に「実抜計画」を策定する見込みがある場合には、貸出条件緩和債権に該当しないものと判断して差し支えないという基準もあります。

 

この実抜計画は厳密には、おおむね3年後の業況が良好で(ただし債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間を排除しない)、財務内容にも特段問題がないと認められる状態となること、実抜計画における売上高・費用・利益の予測等の想定において十分に厳しいものとなっていること等の要件が示されています。

 

しかし実際には、令和3年11月24日に金融庁から発出された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を踏まえた事業者支援の徹底等について」の要請文で、コロナの影響を直接・間接的に受けている事業者の資金繰り支援に万全を期する観点から、これらの要件等について「柔軟な取扱いも差し支えない」旨が明確化されました。

 

すなわち実抜計画の期間については、コロナの影響により実抜計画通りに進捗を図ることが難しい場合等には、コロナの影響収束の見通しが立つまでの期間等を加味して合理的と考えられる範囲において実抜計画の期間を延長することや、3年や5年よりも長期の期間設定をすること、必要に応じて期間を延長するとの留保を付した期間設定とすること、コロナの影響による足許の経営環境の著しい変化を踏まえ、実抜計画の再策定を行うことなどを許容しています。

 

次に計画を策定するまでの期限の猶予については、コロナの影響の全容が見通し難い状況の中で実抜計画の策定を進めることが難しい場合は、コロナの影響収束の見通しが立つまでの期間等を加味して、合理的と考えられる範囲において「最長1年以内」に限らず猶予することも可能となりました。

 

計画を新型コロナウイルス感染症以前の実績等に基づき作成することについては、実抜計画における売上高等の想定は、当該事業者の事業価値や事業環境に照らして十分現実的なものである必要があるものの、コロナの影響の全容が見通し難い状況の中で、そうした現実的な想定をすることが難しい場合には、コロナの影響収束後には経営状況が回復する蓋然性が高いこと等を勘案してコロナ以前の実績や一定の仮定の下で簡易に推計した想定を用いることで、コロナの影響収束後の見通しが立つまでの間、実抜計画として取り扱うこと等も可能となっています。

 

ポストコロナの状況では、金融機関はこれらの柔軟な取扱いを最大限活用し、経営改善計画を策定することで債務者区分を維持しつつ、企業の経営改善・本業支援を行うことで社会的使命を果たしていきます。

次ページ中小企業に適用される「合実計画」の要件
企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント

企業の持続性を見極める 決算書の読み方と業種別のポイント

黒木 正人

ビジネス教育出版社

会社の安全性・収益性・成長性を読み取り、課題を探す力が身につく書。融資力アップに役立つ主な業種ごとのトレーニング事例も収録。

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