2009年に世界最大の「自動車市場」となるも…「中国」が独自ブランド車で海外メーカーと戦えないワケ

2009年に世界最大の「自動車市場」となるも…「中国」が独自ブランド車で海外メーカーと戦えないワケ
(※画像はイメージです/PIXTA)

中国の自動車市場は2009年に世界最大となっています。しかし、それほど大きな市場規模を誇るにもかかわらず、ガソリン車やハイブリッド車では、中国独自のブランド車は海外メーカーと互角に戦えてこなかったと、NTTデータ経営研究所グローバルビジネス推進センターのシニアスペシャリスト岡野寿彦氏はいいます。いったいなぜなのでしょうか? 中国製造業が歴史的に抱える課題から、理由を紐解いていきます。

摺り合わせ型のガソリン車開発では競争力を持てず

中国政府は、自動車産業を国家の基盤を支える重点産業と位置付けて、自国自動車メーカーの実力強化に取り組んできた。1994年に公布した「自動車工業産業政策」では、「外国から技術を吸収して自主開発力を高める」ことが盛り込まれた。

 

日本、ドイツ、米国など外国自動車メーカーが中国市場に参入するためには、「第一汽車」、「第二汽車(現在の東風汽車)」、「上海汽車」の3つの大型国有企業など中国政府が指定した中国自動車メーカーとの合弁会社を設立することが必要とされた。

 

外資の出資比率は50%以下に制限し、外資企業は中国の自動車メーカーと最大で2社までしか提携できないとした。さらに2004年には、外資規制を強めつつ中国自動車メーカーの「研究開発力を強化」、「知的所有権を備えた独自製品の開発」、「中国ブランド戦略の展開」を掲げて2010年までに有力ブランドを持つ複数の企業を育成するとした*

 

2009年には中国は世界最大の自動車市場になった。しかし、開発や生産において緻密な「摺り合わせ」が必要なガソリン車で、中国独自ブランド車は外国自動車メーカーと伍する競争力を持てていない。

 

藤本ら(2005)は第一汽車の製品開発体制について、最適設計された製品を一から開発する潜在力を持つ「統合(インテグラル)型」寄りの組織はできていたが、企業間の激しい製品開発競争を前提としていないために潜在的な研究開発体制が活かされなかった、と指摘する。

 

また、日本企業が得意とするような、企業間で密にコミュニケーションをとって設計、生産を摺り合わせていく強固なサプライヤー・ネットワークを中国国内で構築できていない。中国自動車メーカーは、外国企業との合弁や提携により自社に足りない組織能力を学習・補強してきたが、その組織構造・運営と摺り合わせ型の製品開発との「相性」が良くないことがガソリン車開発で競争力を持てなかった根本的な要因である。

 

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中国的経営イン・デジタル 中国企業の強さと弱さ

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岡野 寿彦

日経BP 日本経済新聞出版

中国的経営の原理とは? 日本的経営とどう違うのか? 先進IT企業のケーススタディを通して、中国企業の「型」を解き明かし、日本企業にとっての教訓をさぐる。 なぜ中国企業は「両利きの経営」を目指すのか?  ●政府…

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