摺り合わせ型のガソリン車開発では競争力を持てず
中国政府は、自動車産業を国家の基盤を支える重点産業と位置付けて、自国自動車メーカーの実力強化に取り組んできた。1994年に公布した「自動車工業産業政策」では、「外国から技術を吸収して自主開発力を高める」ことが盛り込まれた。
日本、ドイツ、米国など外国自動車メーカーが中国市場に参入するためには、「第一汽車」、「第二汽車(現在の東風汽車)」、「上海汽車」の3つの大型国有企業など中国政府が指定した中国自動車メーカーとの合弁会社を設立することが必要とされた。
外資の出資比率は50%以下に制限し、外資企業は中国の自動車メーカーと最大で2社までしか提携できないとした。さらに2004年には、外資規制を強めつつ中国自動車メーカーの「研究開発力を強化」、「知的所有権を備えた独自製品の開発」、「中国ブランド戦略の展開」を掲げて2010年までに有力ブランドを持つ複数の企業を育成するとした*。
2009年には中国は世界最大の自動車市場になった。しかし、開発や生産において緻密な「摺り合わせ」が必要なガソリン車で、中国独自ブランド車は外国自動車メーカーと伍する競争力を持てていない。
藤本ら(2005)は第一汽車の製品開発体制について、最適設計された製品を一から開発する潜在力を持つ「統合(インテグラル)型」寄りの組織はできていたが、企業間の激しい製品開発競争を前提としていないために潜在的な研究開発体制が活かされなかった、と指摘する。
また、日本企業が得意とするような、企業間で密にコミュニケーションをとって設計、生産を摺り合わせていく強固なサプライヤー・ネットワークを中国国内で構築できていない。中国自動車メーカーは、外国企業との合弁や提携により自社に足りない組織能力を学習・補強してきたが、その組織構造・運営と摺り合わせ型の製品開発との「相性」が良くないことがガソリン車開発で競争力を持てなかった根本的な要因である。
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