なぜ中国企業は「ファーウェイ」を手本とするのか?
中国の書店ではアリババとともにファーウェイに関する書籍が並べられており、そのマネジメントについて学ぶ中国企業人も多い。中国企業人はファーウェイの何を学ぼうとしているのか? 本書籍(『中国的経営イン・デジタル 中国企業の強さと弱さ』日経BP 日本経済新聞出版)執筆を目的とする中国企業人へのインタビューでは4点が提起された。
1.研究開発を重視、中国における技術進歩をリード
「ファーウェイ基本法」(ファーウェイの経営方針を定めた全103条の社内憲法)では、「売上高の10%以上を研究開発費に支出することを確保し、必要かつ可能な時は支出比率を増やす」(第26条)と規定している。
ファーウェイの研究開発職は2020年で10・7万人おり、全社員の54・8%を占める(2021AnnualReport)。中国企業は一般に短期的な利益を重視する傾向が強く、研究開発能力の不足が課題だが、ファーウェイは研究開発投資を利益よりも優先する経営を継続して技術の進歩をリードしている。
2.中国民営企業が直面する課題を克服、持続的成長を実現
資金繰り、人材確保、販路など中国の民営企業が創業時に直面する課題を乗り越えて、1987年に設立して以来増収を続けてきた*。なお、2002年売上221億元は前年225億元より下降したが、ファーウェイはこの時期を「華為的冬天」(ファーウェイの冬)と位置付けている。
* 2021年度は米国による制裁などの影響を受けて、2020年度売上高は8913・68億人民元から6368・07億人民元への減収となった
3.「最もグローバル」な中国企業
グローバルなマーケットでの販売、グローバルレベルでのリソースの活用、文化の多様性という3観点のいずれでも、ファーウェイは中国のリーディング企業だと評価する見方を多く聞く。
・グローバルレベルでのリソースの活用:自国の文化の特徴を維持しながら多様性を受け入れる。
5Gイノベーション研究センターを世界18カ国に設立している。また、財務リスク・コントロールセンターをロンドン、ニューヨーク、東京に置き、ロンドンは金融税務政策とオペレーション、東京はリスク管理、ニューヨークはマクロ経済におけるリスク判断の提言を行っている。このように、異なる国/民族の特性を経営に取り入れようとしている。
4.能力を最大限に発揮でき、「知識」を重視した人材確保に注力
能力を最大限に発揮するインセンティブを持たせ、彼らを企業の主人公としてグローバルな競争力を築いてきた。「ファーウェイ基本法」では「知識」を企業の価値創造における中核として位置付けて、会社の利益配分における知識の位置付けも規定している(第16条「価値創造」、第17条「知識の資本化**」)。
** 「労働、知識、企業家と資本が会社のすべての価値を創造している」(第16条:価値創造)。
「資本に転換する方式によって、労働、知識および企業家のマネジメントとリスクに対して蓄積された貢献を、評価と報酬の獲得に結び付ける。持ち株制度を通じて、会社の中堅層の力を形成し、会社に対する有効な管理を保持して、会社を持続的に成長させることができる。知識の資本化は、技術と社会の変化に対する活力ある財産権制度であって、我々が不断に探究する方向である」(第17条:知識の資本化)。
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