(※画像はイメージです/PIXTA)

3月決算で今期利益が出ている企業は、決算対策の大詰めを迎えていることと思います。今からの数日間でできることは限られていますが、消耗品の爆買いや交際費の支出などのリスキーな方法に走る前に、帳簿上の計算処理だけで済む方法を検討することをおすすめします。本記事ではそういった方法の一つ「貸倒損失」について解説します。

 

「不良債権」が「節税」に役立つ方法

貸倒損失とは、回収不能になってしまった債権がある場合に、その額を損失として損金計上できるものです。

 

債権はプラスの資産なので、それがなくなってしまったと評価される場合には、損失が計上されるということです。

 

貸倒損失の計上が認められるケースは以下の3通りです(国税庁HP参照)。

 

【貸倒損失の計上が認められる3つのケース】

1. 法律上の貸倒れ

2. 事実上の貸倒れ

3. 形式上の貸倒れ

 

「法律上の貸倒れ」とは

まず、「法律上の貸倒れ」は、債務者が破産してしまったことにより、債権の全額または一部の回収が「法的に不可能」になった状態をさします。

 

以下のようなケースが典型的です。

 

(1)会社更生法、会社法、民事再生法等の規定によって債権が切り捨てられた

(2)債権者集会、行政機関・金融機関のあっせんによる協議において、合理的な基準にしたがって債権が切り捨てられた

(3)債務者が債務超過に陥り金銭債権の支払いを受けられる見込みがないので、やむをえず書面による「債務免除」を行った

 

いずれも、法律や契約等の法的な根拠に基づいて債権が切り捨てられ、法的に回収する権利が失われたケースです。

 

なお、(3)の「債務免除」は、(1)(2)に準じるもの、すなわち、債務者の側で債務超過の状態が相当期間継続し、どうしても債権が回収不能な状態に陥った結果として債務免除に踏み切らざるを得なくなったケースでなければ認められません。

「事実上の貸倒れ」とは

事実上の貸倒れは、「法律上の貸倒れ」になる一歩手前の段階です。債務者が法的な破産状態に陥っていなくても、資産状況、支払能力が乏しく、債権回収が不可能なことが明らかな場合をさします。

 

債権回収が「困難」という程度にとどまっている場合は、「事実上の貸倒れ」とは認められません。

 

たとえば、債権者の財産を差し押さえて債権全額の満足を得ることができる場合等であれば、いまだ「債権回収が不可能」とまではいえないのです。

「形式上の貸倒れ」とは

形式上の貸倒れはやや特殊です。「事実上の貸倒れ」と似ていますが、対象は継続的取引から発生した「売掛債権」に限られます。

 

債務者の資産状況・支払い能力の悪化により取引上の信頼関係が失われ、やむなく取引自体を停止した後、債権回収が不可能となっている状態です。

 

以下のどちらかをみたす必要があります。

 

【形式上の貸倒れが認められる要件】※いずれか

・弁済がないまま1年以上経過した

・債務者に支払いを催告しても応じてくれず、取り立てを行うと費用倒れになってしまう

 

「貸倒損失」を計上することには、税負担を抑えるための決算対策としての意義とともに、キャッシュフローが改善するという意義、不良債権を一気に整理できるという意義もあります。

 

また、帳簿上の処理だけで完了するので、もしも、回収不能に陥っている不良債権がある場合は、ぜひ、決算対策を兼ねて貸倒損失を計上することをおすすめします。

 

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