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マスクは「奇跡を起こす準備」をした
■奇跡は起きるんじゃない。自ら「起こす」んだ!
マスクは「壮大なビジョン」を掲げる一方で、マスタープランに沿って着実にステップを上っていき、壁を突破するという堅実さも持ち合わせている。
もちろんスケジュール通りではない。しかし結果的には、目標を達成している。
例えば、マスタープランの1番目の「ハイエンドのスポーツカーを最初のモデルとして市場に投入する」は2008年の「ロードスター」の発売で実現している。
2番目の「ロードスターより安い手頃な価格の車をつくる」は、2012年の「モデルS」の発売で実現している。
3番目の「より安価な大衆型モデルを発売する」は、2015年発売の「モデルX」と、2017年発売の「モデル3」、2020年発売の「モデルY」が該当する。
紆余曲折はあったにせよ、マスクは「マスタープラン」通りのことを実現し、今や年100万台近い車の生産と販売を行なう電気自動車のトップランナーとして君臨している。そして、その成長を後押ししたのが、2010年の株式公開である。
マスクが初めてテスラモーターズに出資したのは2003年の出来事であることは、これまで何度か触れてきた。それから5年もの年月をかけて、2008年にようやく最初の電気自動車「ロードスター」の販売にこぎ着けている。
生産台数は微々たるものだったが、ロードスターへの高い評価から2009年にはドイツのダイムラーと資本業務提携に至っている。続く2010年5月にはトヨタがテスラへの資本提供を行ない、そのわずか1ヶ月後にテスラは株式公開を果たすことになった。
アメリカにおける自動車メーカーの上場は1956年のフォード・モーター以来であり、まさに「奇跡」といっても過言ではない出来事だった。
テスラが上場したことの意義をマスクはこう話している。
「米ゼネラル・モーターズ(GМ)が破綻し、(ベンチャーである)テスラが上場を果たすなど5年前は誰も予想しなかった。世界はひっくり返った」
マスクによると、2022年の時点で破産を経験していないアメリカの自動車会社は2社。フォードとテスラだけである。ビッグ3の1つクライスラーは2009年に破産して、現在はフィアットの傘下に入っている。かつて世界一の座にいたGMも2009年に破産、一旦は国有化(現在は解消)されている。
こうして見ていくと「自動車会社を起こすこと自体愚かなこと」であり、ましてや「電気自動車会社に至っては愚の骨頂」というのもよくわかるが、マスクはあえて難事に挑み、結果的に7年足らずで株式公開にこぎ着けた。
そう考えるとやはり「奇跡を起こした」としか言いようがないのだ。ましてやテスラが2位のトヨタに4倍もの差をつけて時価総額のトップになるなど誰が想像できただろうか。
結果は「奇跡」ではあっても、「奇跡を起こす準備」をマスクは丹念にやり続けていた。だから「奇跡」は起きた。いわば「奇跡は必然だった」という見方もできるのだ。
マスクのマスタープランには「株式公開」は書かれていなかったが、マスクはその先の「マスタープラン2」はしっかりと用意していた。次のようなことが書かれている。
◎エネルギー生産と貯蔵を統合する
バッテリーとソーラーパネルを組み合わせた製品をつくり、一人ひとりが自分の電気をつくれるようにする。
◎すべての主要セグメントをカバーできるように製品ラインナップを拡大する
現在の一般ユーザー向けの車種以外に、大型トラックと都市型輸送手段を開発する。
◎自動運転の実現
車の操縦が完全に自動化される「レベル5」を目指す。理想は車に乗り込んで行き先さえ指示すれば、眠っていても到着できる車。
◎カーシェアリング
車を使っていない間、オーナーがその車を使って収入を得られるようにする。
これらが実現すれば、テスラは自動車業界を激変させるといわれる「CASE(通信と車の接続、自動運転、共有、電動化)」のトップランナーになることができる。トヨタなどはそれだけに、テスラの動きに神経質になっている。
さて、このエピソードでマスクが教えてくれるのは、奇跡は決して偶然起きるわけではないということである。確かな計画性としっかりとした実行力があって初めて「奇跡」のような出来事が起きる。奇跡は起きるものではなく起こすもの。
これがマスク流「不可能を可能にする」仕事術である。
桑原 晃弥
経済・経営ジャーナリスト
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