健康上よくない「座っているときも猫背」の姿勢
ここでは正しい姿勢、中でも「正しい座り方」についてお話しします。椅子に座るときでも、あぐらをかくなど床に座るときでも、悪い姿勢になる人は珍しくありません。多いのは「座っているときも猫背」というパターンです。
「座っているときも猫背」の場合、正しい姿勢でいるよりも、首や腰に負荷がかかってしまい、ひいては首痛や肩こり、腰痛などになってしまいます。また、内臓を圧迫するため呼吸は浅くなり、内臓内の血流も滞るため、健康上決してよくありません。
正しい座り方を身につけて、常に気持ちよく座るようにしましょう。曹洞宗の開祖である道元禅師による書『坐禅儀』などにも、座り方についての記述があります。「鼻はへそに、耳は肩に」。これは、「鼻とへそ、耳と肩の位置を意識しなさい」という教えです。「へその上に鼻があるような、また肩の上に耳たぶが乗っている」というイメージで座ることの大切さを伝えてくれています。
「鼻はへそに、耳は肩に」を正しく行うと、背筋が自然にまっすぐになり、からだ全体が整います。「耳を肩の上に乗せる」と連想するのが難しい場合は、両手をいったん上げて、耳の横につけ、そのまま静かに両手を下ろしてみましょう。ラジオ体操の最後、深呼吸の手の動きと同じです。
腕を上げ下げすることによって肩甲骨を動かすと、耳と肩の位置をうまく意識することができます。この動作は、からだが硬くなっている人にはなかなか難しい動作かもしれません。この動きを繰り返すだけでも、頭痛や肩こり、腰痛の解消につながります。
理想は「赤ちゃんの座り方」!?
実は、もっとも理想の座り方は「赤ちゃんの座り方」です。首が据ってお座りができるようになった赤ちゃんは、足を前に投げ出して座っています。一見すると不安定なように見えますが、実は背筋をきちんと伸ばし、大きな頭を背骨の上に乗せて、うまく支えています。
赤ちゃんのからだは、筋力がまだまだ多いわけではありません。したがって、姿勢のよさによって、うまく頭を支えていることになります。また、からだ全体がグラグラ、ユラユラしているような印象がありますが、よく見ると「鼻はへそに、耳は肩に」ができています。その上、赤ちゃんはリラックスもできています。これは見事な姿勢です。私たち大人は、まず正座やあぐらから、座り方を練習してみましょう。
【正座やあぐらで座ったときの姿勢の整え方】
① 普段通り正座もしくはあぐらをかきます。
② 正座(あぐら)の姿勢のまま、座礼をするように、両手を膝の前について上体を前に
倒します(股関節から上体を前に倒します)。
③ 上体を起こします。肩甲骨を骨盤に向かって下ろすようイメージし、鼻とへそが揃う
ことを意識しましょう。
この「整え方」を行う際は、丹田を意識するとさらにうまく、楽に座ることができます(丹田とはへその下の部分、声を出したときに連動して力が入るお腹のポイントを指します)。あぐらの姿勢で行うとき、股関節が硬くなっていると、上体を起こすことがなかなか難しくなります。その際は、お尻の下に座布団を敷いて行ってみてください。
【椅子に座ったときの姿勢の整え方】
①椅子の前に立ちます。
②前かがみになりながら、背骨を整えます。股関節から上体を倒し、お尻をつき出すよ
うにします。肩甲骨を外に開き、首固定をして、背筋を伸ばすことをイメージしましょ
う。
③つき出したお尻を椅子の奥に入れて、腰を下ろします。背骨を立てて、腰を下ろすこ
とをイメージするとよいでしょう。
【図表 座ったときの姿勢の整え方】