物にも「肖像権」がある?ストリートでの動画撮影で訴えられないため知っておくべきルール【IT専門弁護士が解説】

物にも「肖像権」がある?ストリートでの動画撮影で訴えられないため知っておくべきルール【IT専門弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

今やもっとも身近なメディアのひとつとなった「YouTube」。誰でも動画を撮影してアップロードできますが、ルールをよく理解せずに利用しているケースも多く見受けられます。本記事では、ITエンジニアの経歴をもつ弁護士・河瀬季氏が、著書『IT弁護士さん、YouTubeの法律と規約について教えてください』(祥伝社)から、街中で撮影をする際に「物体」に関して注意しなければならない法的問題について解説します。

物の「肖像権」に関する判例

◆物には肖像権がある?

Q.一般的な「物」の場合にはどうなるのでしょうか? 物自体が何らかの権利を有しているとは考えにくいし、物には肖像権はないということでしたよね?

 

A.「物」の撮影と公開については、かえでの木について争われた裁判があります。

 

長野県に15mの高さで有名になったかえでの木がありました。多くの観光客が訪れるなどして悪い影響があったため、「木の撮影及び映像使用は、個人として楽しむ以外は、所有者の許可を得ること」といった看板を所有者が設置しました。

 

この看板の設置以前にかえでの木を撮影していたカメラマンが、この木の写真を掲載した書籍を出版しました。そこで、所有者はかえでの木の所有権を侵害するとして、書籍の出版等の差し止めと損害賠償を求めて提訴しました。

 

しかし裁判所は、所有権はかえでの木そのものを独占的に支配する権利にとどまり、かえでの木を撮影した写真を複製し、書籍を出版する権利を含むものではないため、所有権の侵害には当たらない、としました。

 

一方で、判決では、原告は土地への立ち入りと許可なくかえでの木を営利目的で撮影してはならないことを公示しているのだから、第三者の立ち入りを排除することができるし、土地に柵を設けること等によって、より確実に目的を達成することもできると指摘しています。

 

勝手に土地に入って、かえでの木を撮影してもいいということでは決してないので、注意してくださいね。

 

所有者が自分の建物内で管理しているのに、勝手に立ち入って撮影した場合などには、建物所有者の「施設管理権」を侵害している場合があり、不法行為責任が問われる可能性があります。

 

建物や施設の所有者や管理者には「施設管理権」があります。施設管理権の一環として、「施設内での撮影を禁止する」ことは可能であり、無断で撮影した場合には、施設管理権を侵害したことになります。「店内での撮影」の場合と同じですね。

 

◆車の場合はOK

Q.なるほど。では、道路などを走っている車、例えば珍しいクラシックカーを見つけて撮影する場合はどうでしょうか?

 

A.停車している場合には、礼儀として挨拶し、許可を得る方がいいと思いますが、法律的には問題ありません。ただし、駐車場や他人の敷地内に入り込んで撮影すると、問題となる可能性が生じるというわけです。

 

【まとめ】

・他人の物を撮影し公開することは、建築物や美術品など種類によっては著作権侵害になる。

・車の場合は問題ないが、他人の敷地内に勝手に入って撮影するのはNG。

 

 

河瀬季

弁護士法人モノリス法律事務所

代表弁護士

 

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※本連載は河瀬季氏の著書『IT弁護士さん、YouTubeの法律と規約について教えてください』(祥伝社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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