(※写真はイメージです/PIXTA)

愛情かけて育てた子どもが大学進学等で独り立ちするとなった際、多くの親が考えるのが子どもへの「仕送り」です。反対に、子が働きはじめ、親が退職するなどして、子が親に対して「仕送り」をすることもあるでしょう。これら、仕送りにおける金銭授受は「贈与」にあたるのでしょうか? 元税務調査官で相続専門40年のベテラン税理士秋山清成氏が、家族間での「贈与」について解説します。

親から子どもへの仕送りは「贈与にならない」

子どもの教育資金は贈与にはならない

子どもが大学進学のため親元を離れて一人暮らしを始めたり、医学大学や芸術大学などに進学し多額の授業料がかかったら、その費用は贈与になるのでしょうか。

 

そもそも贈与税には、年110万円までのお金や財産をもらっても非課税になる暦年贈与があるので、親子間で行われる資金の援助や仕送りも年110万円までの分はまったく問題ありません。

 

そのうえで、年間110万円を超える教育資金の贈与を受けた場合でも贈与税はかかりません。相続税法第21条により、「扶養義務者相互間において生活費または教育費等に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は非課税となっています。

 

つまり「教育資金の都度贈与」は非課税です。加えて、子どもや孫を支援する贈与として、1500万円まで非課税の「教育資金の一括贈与」の特例もあります。

 

親への仕送りも贈与には当たらない

一方、年金だけで暮らす親に子どもが年200万円の仕送りをしたら、贈与税はかかるのでしょうか。結論からいうと、通常の生活費の範囲の仕送りは非課税です。この通常の生活費はどこまでがセーフなのかは、その家庭の生活水準や仕送りをする側、受ける側の状況などによって判断が分かれます。

 

200万円なら通常の範囲ではありますが、もっと多額の場合は、相続税専門の税理士に「うちの場合の仕送りや援助はいくらぐらいがよいか」を相談してみましょう。

事業資金の援助なら、親子間で「貸し借りの契約」を

事業資金援助でも「贈与」にあたる

子どもが経営する会社の資金繰りのため、親に事業資金を援助してもらう場合でも、110万円の基礎控除を超える部分に対して贈与税が課税されます。

 

事業を続けるための資金という特性上、援助する金額も少なくないと思われるので、親から子どもが一方的に事業資金をもらう形にすると、多額の贈与税を払わなければなりません。

 

高額な贈与税を回避するために、子どもは親からお金を借りる「金銭消費貸借契約」を結ぶ手があります。これなら贈与にはあたりません。

 

親子間でお金の貸し借りを行う際には、必ず「金銭消費貸借契約書」を作成しましょう。後々、税務署から「これは贈与だったのではないか?」と怪しまれないために、契約書を残しておくことはとても重要です。

 

このとき、「ある時払いの催促なし」という形での契約は絶対にしないでください。通常の借入金なら、契約時に返済期限や毎月の返済額などを決めます。親子間の貸し借りでも同様のことを行ってください。

 

契約書は「常識的な借入金額・月々の返済金額・返済期間・返済利率・返済法」を明記し、返済法は現金で行うのではなく、証拠が残るよう銀行振込にしましょう。

 

親子間のお金の貸し借りで返済不要が明らかになった場合は、高額な贈与税が課税されます。そうならないために最初からビジネスライクに契約を結ぶことが大事です。

 

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※本連載は、秋山清成氏による著書『元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

元国税 相続専門40年ベテラン税理士が教える 損しない!まるわかり!相続大全

秋山 清成

KADOKAWA

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