(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●米金融当局が、3月12日に発表した施策が奏功すれば、動揺は数日から数週間でおさまることも。

●米銀破綻が続けば動揺は数ヵ月続き、世界的な金融危機に発展したなら収束に数年を要しよう。

●世界的な金融危機に発展する恐れは小さいとみるが目先は銀行株中心に慎重な見極めが必要。

米金融当局が、3月12日に発表した施策が奏功すれば、動揺は数日から数週間でおさまることも

米シリコンバレーバンク(SVB)が3月10日に経営破綻したことを受け、米金融市場ではリスクオフ(回避)の流れが強まり、株安・債券高が進行、この動きが日本や欧州の金融市場にも波及しています。そこで、今回のレポートでは、このいわゆる「SVBショック」について、その影響がどこまで広がり、いつまで続くのか、具体的に3つのケースに分けて考えてみます。

 

まず、1つ目は、米金融当局が3月12日に発表した施策(SVBなどの預金の全額保護や、金融機関への流動性供給策)が奏功し、短期間で動揺がおさまるケースです。SVBの破綻は、流動性管理の問題などSVB固有の事情が主因とみられ、他行に広く共通するものではないと思われます。また、このところの国債利回りの低下は、金融機関が保有する国債の含み損への懸念を和らげます。このケースの期間は、数日から数週間と想定されます。

米銀破綻が続けば動揺は数ヵ月続き、世界的な金融危機に発展したなら収束に数年を要しよう

次に、2つ目は、米金融当局の施策によっても動揺がおさまらず、破綻する銀行が相次ぐケースです。この場合、米金融当局はもう一段の対応を迫られ、例えば米連邦準備制度理事会(FRB)であれば、流動性供給の対象拡大や供給手法の多様化、一時的な金融緩和も予想されます。期間は数ヵ月と想定されますが、FRBは金融機関の監督・規制方針を見直し、5月1日までに公表するとしていることから、このリスクは抑制されつつあると思われます。

 

そして、3つ目は、破綻する銀行が米国内で一段と広がり、他国にも飛び火する形で世界的な金融危機に発展するケースです。この場合、米国では銀行の再編が進み、状況次第では公的資金の注入という事態も考えられます。また、他国でも流動性供給や金融緩和が行われ、中央銀行同士、通貨スワップで米ドルを融通し合う展開も予想されます。この間、金融市場の混乱は続き、各国の対応で事態が収束するまで数年を要すると想定されます。

世界的な金融危機に発展する恐れは小さいとみるが目先は銀行株中心に慎重な見極めが必要

3つ目は、2008年9月の「リーマン・ショック」並みの危機です。当時、米欧の金融機関は、信用力の低い借り手向け住宅ローンの証券化商品を多く保有していましたが、ローンの返済延滞で証券化商品の価格が暴落、巨額の損失を被りました。しかしながら、損失の所在や規模が把握できず、信用収縮が発生して金融危機に発展しました。つまり、SVBショックとは明らかに原因が異なるため、3つ目のケースの恐れは小さいと思われます。

 

このように考えた場合、事態は1つ目のケースでおさまるか、2つ目のケースに至るか、ということになりますが、1つのカギを握るのは、やはり銀行株の動向です。米国では昨晩、いったん反発しており(図表1)、これが底入れにつながるか注目されます。なお、日本の銀行株は、日銀の緩和修正期待から物色が進んでいたため、大きな変動がみられます(図表2)。いずれにせよ、目先は銀行株中心に、慎重な見極めが必要と思われます。

 

[図表1]米国の主要株価指数と銀行株指数

 

[図表2]日本の主要株価指数と銀行業指数

 

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『アメリカの銀行破綻…「SVBショック」はどこまで広がり、いつまで続くか【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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