●FRBは今回のFOMCで利上げをいったん見送って、金融不安への対応を優先する可能性が高い。
●今回はドットチャートも公表され2023年末の中央値が注目されるが、5.125%で不変の公算大。
●利上げは5月にも再開へ、今回は声明もパウエル議長の発言も過度にタカ派的にはならないだろう。
FRBは今回のFOMCで利上げをいったん見送って、金融不安への対応を優先する可能性が高い
米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月21日、22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。米国では3月10日のシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻以降、金融不安が強まっていることから、FRBは今回のFOMCで、インフレ抑制を優先し、利上げを継続するのか、金融システムの安定を優先し、利上げを見送るのか、市場の注目が集まっています。
弊社は従来、今会合で25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを予想していましたが、金融市場の動向を見極めるため、利上げはいったん見送る可能性が高まったと考えています。利上げ休止によってインフレの鎮静化が遅れるリスクはありますが、FRBは3月12日に新たな流動性対策(Bank Term Funding Program、BTFP)を発表したこともあり、今回は金融不安への対応を優先すると思われます。
今回はドットチャートも公表され2023年末の中央値が注目されるが、5.125%で不変の公算大
なお、3月15日時点のFRBのバランスシートをみると、前週比で資産の部のローンが3,029億ドル増、負債の部の準備預金が4,405億ドル増となっており、総資産は2,970億ドル増加しています(図表1)。ローンの項目には窓口貸出や前述のBTFPも含まれていることから、金融不安が広がるなかで、金融機関がFRBからの借り入れを積極的に増やした様子がうかがえます。
また、今回のFOMCでは、メンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」が公表されます。前回12月の会合では、2023年末のドット中央値は5.125%でしたが、この中央値が今回、どのような水準になるかも、市場の関心の高いところです。弊社では、利上げ見送りの決定とともに、中央値は5.125%のままとなる公算が大きいとみています。
利上げは5月にも再開へ、今回は声明もパウエル議長の発言も過度にタカ派的にはならないだろう
利上げが見送られ、ドットチャートの年末中央値も変わらないとなれば、金融市場の動揺は幾分和らぐことも見込まれますが、その一方で、やはりインフレの問題が悪化することも懸念されます。そのため、弊社では今回の利上げ休止はあくまで一時的なものであり、雇用調整を進めるためには追加的な利上げが必要となるため、金融市場が落ち着き次第、利上げを再開すると考えています。
具体的には、5月と6月に25bpの利上げを行い、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が5.00%~5.25%に達したところで年内据え置きを予想しています。直近のFF金利先物市場の織り込みとは異なる見通しですが(図表2)、いずれにせよ今回は、FOMC声明でも、パウエル議長の記者会見における発言でも、過度なタカ派姿勢を示して金融市場を動揺させることは避けると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米SVB経営破綻で「利上げ」はどうなる?2023年3月FOMCプレビュー ~今回の注目点を整理する【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト