介護保険料、「月額2,075円」から今や「3倍近く」に…。特養の空き待ち人数は「27万5,000人」という“厳しい現実”【老年医学の専門医が解説】

介護保険料、「月額2,075円」から今や「3倍近く」に…。特養の空き待ち人数は「27万5,000人」という“厳しい現実”【老年医学の専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「死」と距離が生まれてしまった現代では、自分の死について考える機会がめっきりと減ってしまいました。ですが、死は誰にでも確実に訪れます。50万部超の大ベストセラー『80歳の壁』の著者、高齢者専門の精神科医である和田秀樹氏が、35年以上の高齢者診療で辿り着いた「極上の死に方」について、新刊『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)より解説します。

特養の空きを待っている人は“27万5000人”

2025年までにすべての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。団塊の世代とは、1947~49年に生まれた人たちで、この世代だけで約600万人います。大量の後期高齢者を支えるために、社会保障、主に医療・介護、年金などが限界に達し、社会全体に負の影響がもたらされてしまう──といわれています。

 

この「2025年問題」を控え、在宅医療・在宅介護の重要性が認識されて、厚労省が「在宅医療・介護推進プロジェクトチーム」を設置したわけですが、訪問診療や訪問介護サービスを提供する体制はまだまだ不十分です。

 

本書の中で、介護保険制度が変節してきたと言いましたが、2000年に始まったとき、「措置から権利に」というスローガンがありました。

 

どういう意味かと言うと、それまでの高齢者福祉は、本人の意思とは関係なく、その人が福祉サービスを受ける要件を満たしているかどうかを行政が判断して提供する「措置制度」でした。

 

たとえば、この人はもう一人暮らしは無理だから施設に入れましょうとか、いや、まだまだ大丈夫なようだからご家族で頑張ってくださいね、とかいう形で行政が牛耳ってきたわけです。

 

それが介護保険制度を導入することによって、「措置」から「権利」になった。つまり、毎月、保険料を徴収する代わりに、だれでも要介護と認定されれば介護を受ける「権利」を与えます、というものです。

 

権利をもらったわけですから本来、子育てが大変なので親の施設介護を選びたいとか、あるいは親の介護をしていたら会社を辞めなくてはいけなくなるので特養に入所させたいという要望があれば、それに応えなくてはならない。ところが、国はその要望に応えられるだけの十分な数のホームをつくらなかった。前述したように20年以上経ってもいまだに特養の空きを待っている人が27万5000人もいる。2年待ち3年待ちというのは、権利でも何でもありません。

 

介護保険制度は3年ごとに見直されることになっていて、2025年には要介護3以上でなければ特養に入れないなどと勝手にルールを変えてしまいました。そして先に言ったように、在宅看取りと在宅介護をごちゃまぜにして、在宅死のほうがいいですよ、と嘘をついて回ったわけです。

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    本連載は、和田 秀樹氏の著書『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)から一部を抜粋し、再構成したものです。

    どうせ死ぬんだから

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    和田 秀樹

    SBクリエイティブ

    50万部超の大ベストセラー『80歳の壁』の著者が35年以上の高齢者診療で辿り着いた死生観「どうせ死ぬんだから」。食生活や財産、医療との付き合い、死後のことまで、逝き方上手な高齢者から得た具体的な提案が満載。自分の死に…

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