特養の空きを待っている人は“27万5000人”
2025年までにすべての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。団塊の世代とは、1947~49年に生まれた人たちで、この世代だけで約600万人います。大量の後期高齢者を支えるために、社会保障、主に医療・介護、年金などが限界に達し、社会全体に負の影響がもたらされてしまう──といわれています。
この「2025年問題」を控え、在宅医療・在宅介護の重要性が認識されて、厚労省が「在宅医療・介護推進プロジェクトチーム」を設置したわけですが、訪問診療や訪問介護サービスを提供する体制はまだまだ不十分です。
本書の中で、介護保険制度が変節してきたと言いましたが、2000年に始まったとき、「措置から権利に」というスローガンがありました。
どういう意味かと言うと、それまでの高齢者福祉は、本人の意思とは関係なく、その人が福祉サービスを受ける要件を満たしているかどうかを行政が判断して提供する「措置制度」でした。
たとえば、この人はもう一人暮らしは無理だから施設に入れましょうとか、いや、まだまだ大丈夫なようだからご家族で頑張ってくださいね、とかいう形で行政が牛耳ってきたわけです。
それが介護保険制度を導入することによって、「措置」から「権利」になった。つまり、毎月、保険料を徴収する代わりに、だれでも要介護と認定されれば介護を受ける「権利」を与えます、というものです。
権利をもらったわけですから本来、子育てが大変なので親の施設介護を選びたいとか、あるいは親の介護をしていたら会社を辞めなくてはいけなくなるので特養に入所させたいという要望があれば、それに応えなくてはならない。ところが、国はその要望に応えられるだけの十分な数のホームをつくらなかった。前述したように20年以上経ってもいまだに特養の空きを待っている人が27万5000人もいる。2年待ち3年待ちというのは、権利でも何でもありません。
介護保険制度は3年ごとに見直されることになっていて、2025年には要介護3以上でなければ特養に入れないなどと勝手にルールを変えてしまいました。そして先に言ったように、在宅看取りと在宅介護をごちゃまぜにして、在宅死のほうがいいですよ、と嘘をついて回ったわけです。