男性は平均9年、女性は12年。
ここで改めて、日本人の平均寿命と健康寿命を見てみましょう。まず平均寿命は、男性が81.47年、女性は87.57年(2021年)です。
一方、心身ともに自立した生活を送れる「健康寿命」の平均は、男性が72.68歳、女性が75.38歳(2019年)で、その差は、男性約9年、女性約12年です。
「健康寿命」の定義は、WHOによると「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、健康寿命を過ぎると、なんらかの健康上の問題で、日常生活に制限が生じます。その期間が、男性は約9年間、女性は約12年間あるわけですが、それがそのまま介護や公的な支援を受ける期間というわけではありません。
もちろん介護や支援を受ける人もいますが、要するに「若い頃より不自由になったと感じる期間」と捉えてよいでしょう。この期間がこれほど長いことに驚かれた読者の方も多いかもしれません。
言うまでもなく、これは統計上の数字にすぎません。前章で話したように70代以降は個人差も大きい。実際、90歳を超えても畑仕事をしながら一人暮らしを続けているすこぶる元気な高齢者も少なからずいます。
しかし、そういう人も含めて、だれでもいつかはだれかの世話にならざるをえないことも事実です。
年代別に見ると、要支援・要介護認定者の割合は、65~69歳では2.9%ですが、70~74歳は5.8%、75~79歳は12.7%。80歳以上になると比率はぐっと上がり、80~84歳では26.4%、85歳以上では59.8%となっています(厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」、総務省「人口推計月報」の各2021年10月データをもとに公益財団法人・生命保険文化センターが作成したデータ)。
高齢者の場合、それまで元気に暮らしていても、うっかり転んで大腿骨を骨折し、1ヵ月寝ていただけで、まったく歩けなくなってしまうことはよくあります。
「私だけは大丈夫」と高を括ってはいられません。
そこで、どこを「終の棲家」にするか、どこでどのように最期を迎えたいか、だれの世話になるのかも含めて決めておくことが、死ぬまでの「生」を充実させるためには重要になってきます。