(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業で後継者への事業承継(自社株式の承継)を行う場合、後継者の相続税・贈与税等の負担が重くなるおそれがあります。そこでぜひ活用したいのが「事業承継税制」の「納税猶予制度」です。事業承継の実務の専門家である中小企業診断士・CFPの平賀均氏が、著書『まだ間に合う! 最新 事業承継税制—特例承継計画と納税猶予の申請 』(ロギカ書房)より、「相続税・贈与税の納税猶予制度」の3つの活用事例を解説します。

納税猶予の活用パターン

円滑な事業承継を行うために、「事業承継税制」における「贈与税の納税猶予」および「相続税の納税猶予」を組み合わせて活用することで、何代にもわたって、自社株式の事業承継に伴う贈与税・相続税の負担を軽減させることができます。ここでは、代表的な3つのパターンについて解説します。

1|後継者へ贈与するパターン

先代経営者が後継者に贈与するパターンです。一般的にはこのパターンが多いものと思われます。

 

「贈与税の納税猶予」の特例措置を受けるためには、「特例承継計画」を提出期限である2024(令和6)年3月31日までに提出しておきます。そして、株式の一括贈与は2027(令和9)年12月31日までに実行します。

 

贈与税の申告期限後5年間は、後継者による事業継続が求められます。後継者は、代表者を退任したり、株式を売却したりすることはできません。5年経過後は、株式の継続保有等の適用要件があります。適用要件を満たす限り、納税猶予が継続します。

 

社長の平均退任年齢は約70歳とされていますので、先代経営者が贈与したときが70歳、後継者の年齢を40歳としましょう。後継者(2代目)が引退する年齢70歳になるまでの向こう約30年間、納税猶予を継続することが可能です。

 

実際には、その前に先代経営者(贈与者)の死亡が発生します。70歳の男性の平均余命は約86歳(簡易生命表による)ですので、16年後には、先代経営者が死亡すると仮定します。

 

先代経営者(70歳)が後継者(40歳)に株式を贈与して、その後先代経営者が死亡する(86歳時)と、後継者(56歳時)に納税猶予されていた贈与税が免除になります。

 

先代経営者(1代目)の死亡により、先代経営者の相続が発生しますが、後継者(2代目)は自社株式を相続により取得したものとみなされます。

 

[図表1]後継者へ贈与するパターン

 

先代経営者の死亡時点の相続財産に、納税猶予されていた贈与株式を加算して、相続税を計算することになります。自社株式は贈与時点の価額を基礎として計算されます。

 

このままだと相続税を納税しなければなりませんが、贈与されていた株式については、相続税の納税猶予に切り替えることができます(切替確認)。もちろん、相続税を支払ってもかまいません。選択は後継者の任意です。

 

なお、特例措置で贈与税の納税猶予を受けている場合には、贈与者の相続発生が2028(令和10)年以降になったとしても、特例措置で相続税の納税猶予(切替確認)を受けることができます。

 

たとえば、2027年に贈与を行い、贈与税の納税猶予の特例措置を受けた後、2043年に贈与者に相続が発生したときには、当該相続税については特例措置が適用されます。

 

次に、後継者(2代目)が死亡した場合です。後継者(2代目)が死亡した時点で、猶予されていた1代目の贈与税は免除されます。

 

2代目の相続時に、3代目が、自社株式に係わる相続税の納税猶予を選択するかは任意です。納税猶予を選択しない場合や認定要件を満たさない場合は、相続税を支払うことになります。

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まだ間に合う! 最新 事業承継税制—特例承継計画と納税猶予の申請

まだ間に合う! 最新 事業承継税制—特例承継計画と納税猶予の申請

平賀 均

ロギカ書房

令和6年3月31日まで、特例承継計画提出期限迫る!! 最新の様式と記入例により、具体的な手順と内容を示し、 申請手続きを効率的に行えるよう解説!! 現在、国内の中小企業数は減少傾向にあり、そして経営者の平均年齢は上昇…

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