事業承継税制を利用できる「後継者」の範囲は「特例措置」により広がった
従来の一般措置では、1人の先代経営者から1人の後継者に株式を譲渡(贈与または相続)する場合にしか事業承継税制は適用されませんでした。いわばマン・ツー・マンであったわけです。
特例措置では、先代経営者以外の複数の株主から、最大3人の後継者に株式を譲渡(贈与又は相続)できるようになりなりました。
なお、一般措置でも2018(平成30)年1月からは、複数の株主から後継者に株式の譲渡ができるようになりましたが、後継者については1人に限られたままです。
また、一般措置では親族しか後継者になれませんが、特例措置では、先代経営者以外の株主および後継者は第三者(親族外)でも可能となりました。
それでは後継者の要件を、贈与と相続のそれぞれについてみていきます。
贈与における「後継者」の要件
株式を生前に後継者に贈与する場合、特例措置の対象となる後継者の要件は以下の通りです。
【株式の贈与の場合に特例措置の対象となる後継者の要件】
1. 贈与時に18歳以上の代表者であり、かつ、贈与の直前において3年以上継続して役員であること
2. 贈与時において、後継者とその同族関係者で総議決権数の過半数を保有していること
3. 一定数以上の株式を受贈すること
4. その会社の株式について、一般措置の適用を受けていないこと
5. 特例承継計画に記載された後継者であること
◆要件1. 贈与時に18歳以上の代表者であり、かつ、贈与の直前において3年以上継続して役員であること
後継者は、贈与の日において18歳以上であり、継続して3年以上その会社の役員である必要があります。したがって、設立後3年未満の会社の役員は、この要件を満たさないことになります。
また、役員であった期間が3年以上あったとしても、贈与の日前3年の間に役員でない期間がある場合には要件を満たしません。継続して役員であったことが必要です。常勤・非常勤は問いません。
役員とは、株式会社の場合は、取締役、会計参与および監査役をいいます。役員であれば、地位は同一でなくてもよく、監査役1年と取締役2年を継続して就任していてもよいとされています。
さらに、贈与時には代表者でなければなりません。したがって、代表権のない後継者は、代表者に就任してから株式の贈与を受けることになります。
代表権を3年以上有している必要はありません。
◆要件2. 贈与時において、後継者とその同族関係者で総議決権数の過半数を保有していること
贈与の時において、後継者(受贈者)とその同族関係者で総議決権数の過半数を保有していることが必要です。