映画『マトリクス』『トゥルーマン・ショー』が90年代に既に“現在の私たち”に突き付けていた「恐るべき問い」とは

映画『マトリクス』『トゥルーマン・ショー』が90年代に既に“現在の私たち”に突き付けていた「恐るべき問い」とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

ITの急速な発展と普及により、私たちの生活は格段に便利になりました。一方、以前はなかった様々な問題が噴出しています。興味深いことに、1990年代のアメリカ映画には、あたかも今日の状況を既に予見していたかのような作品がみられます。NHKエンタープライズ エグゼクティブプロデューサーの丸山俊一氏が著書「アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望」(祥伝社)より解説します。

『キャスト・アウェイ』に込められた問い

無人島で必死に生き延びる彼は、一緒に島に流れついたバレーボールにウィルソンという名前をつけ、心の友とする。バレーボールにひたすら話かけることで心の平衡を保つ男の姿を見ているうちに観客たちは、複雑な感慨に囚われる。私たちと彼は、一体どこが違うのだろう?

 

『フォレスト・ガンプ』から4年。再びタッグを組んだトム・ハンクスとロバート・ゼメキスは、主人公の運命に90年代を総括するような問いを背負わせた。

 

日々の慌ただしい流れに身を任せているうちに、私たちは、何かを失ってしまったのではないか? 一人、空虚な自己満足の言葉を、誰かれ構わず、投げかけるようになってしまっていたのではないか。

 

トム・ハンクスの姿に自分を重ね、アメリカという国が大事にしてきたものの喪失へと想いを馳せても、失った時は返ってはこない。

 

90年代アメリカは、綻びが出始めていた。

 

そんな時に冷戦が終息、歴史的な大きな物語に人々の目が奪われているうちに、国内で抱える不安、葛藤と向き合わずに済んでいたのかもしれない。それを覆い隠すかのようなITブーム、グローバル化の急激な進展とその過程で喪失した、アメリカの美徳。

 

だが、新たな世紀を迎えてすぐ、大きな危機がアメリカを襲うことになる。

 

 

丸山 俊一

NHK エンタープライズ

エグゼクティブ・プロデューサー

 

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アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

丸山 俊一

祥伝社

欲望の正体を求めて。想像力の旅が始まる。 NHK「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」アメリカ編を 完全書籍化 番組では放送されなかったインタビューも収録 理想、喪失、そして分断 アメリカはどこへ行こうとしているの…

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