(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、若い世代にも飲酒習慣がある人が増え、若い頃からの多量飲酒によりアルコール依存症のリスクが高い人も増加傾向にあります。お酒はほどほど、「適量」を守ることが肝心です。産業医の富田崇由氏がコストゼロからできる健康経営について解説します。

健診数値の改善にはアルコールとたばこにも注意

▶健康管理③筋肉をつけると血糖値対策にも有効

食事とともに大事なのが運動習慣です。体を動かさずにいると筋肉がどんどん減少してしまいます。特に運動習慣がない人では成人してからは年に1%ずつ筋肉量が減少していくといわれます。

 

私たちの体の筋肉は食事で摂った糖をグリコーゲンとして蓄え、身体活動のエネルギーとして使っています。筋肉が減少すると、摂取した糖を十分に貯蔵・消費できなくなり、肥満へと傾いていってしまいます。

 

また体を動かさないと血流が悪くなり血管を柔軟に保つ機能が低下します。そして血圧が上昇していったり、動脈硬化が進行したりします。こうした健康リスクを防ぐためには運動や生活中の活動でよく体を動かすことが不可欠です。

 

職場での運動・身体活動を増やす取り組みは楽しくできる、無理なくできるというのがポイントです。私の知っている会社では社員に野球やサッカーが好きな人が多いので、昼休みや休日に集まれるメンバーでスポーツを楽しんでいるところがあります。ウォーキングイベントに参加する、社員に歩数計を渡してゲーム感覚で歩数を競争する、といった事例もあります。

 

楽しいイベント的な活動のほかに日常の通勤や仕事での身体活動を増やすのも有効です。徒歩通勤や自転車通勤をできるように社内のルールを整備するのも一案です。電車通勤でも最寄り駅まで毎日歩いて往復している人は3分ごとに普通の歩き方と早歩き(全速力の7割程度)を交互に繰り返すインターバル速歩をすると、筋肉を増やす効果が高まります。

 

ほかにも職場でラジオ体操をする、フロアの移動は階段を推奨するなど、無理なく取り入れられ、続けられる活動がいろいろ考えられます。

 

▶健康管理④飲酒・喫煙のコントロールも重要

血圧、血糖、血中脂質、肥満、メタボ、肝機能といった健診数値を改善するためには、アルコールとたばこにも注意が必要です。

 

2020年4月から健康増進法の一部が改正・施行になり、社員が集まる事務所も原則屋内禁煙となっています。屋内での喫煙を認める場合は喫煙専用スペースを設置する必要があります。これは「望まない受動喫煙をなくす」のが目的ですが、そもそも喫煙は、本人にとっても健康に有害であることを再確認してください。

 

たばこを吸うことは、いってみれば有害物質を吸い込む行為です。たばこの煙の中ではさまざまな燃えカスが生成されています。この燃えカスには、ニコチンや一酸化炭素、タールといった健康被害をもたらす有害物質が、約200種類も含まれています。

 

喫煙が引き起こすという因果関係が確実とされている健康障害には、次のようなものがあります。

 

・がん:肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝、膵、膀胱、子宮頸部
・肺がん患者の生命予後悪化、がん患者の二次がん罹患、かぎたばこによる発がん
・循環器の病気:虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢血管硬化症
・呼吸器の病気:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸機能低下、結核による死亡
・糖尿病:2型糖尿病の発症
・その他:歯周病、ニコチン依存症、妊婦の喫煙による乳幼児突然死症候群(SIDS)、早産、低出生体重・胎児発育不全

 

長くたばこを吸っている人は「今さら禁煙しても遅い」と思うようですが、いつからでも禁煙をすれば健康リスクは確実に下がります。今は、薬を使ってつらい離脱症状を抑えながら、禁煙に導く禁煙外来も増えています。職場で地域の禁煙外来の情報提供をしたり、受診費用の補助などを行ったりするのも効果があります。

 

2020年4月からは健康保険による禁煙外来で、オンライン診療が認められるようになっています。標準的な禁煙プログラム計5回のうち、初診と最終診察を除く3回は、オンライン診療が可能です。また健康保険組合が実施する禁煙治療では、すべてオンラインで受診できる場合もあります。仕事で通院の時間がとりにくい人でも治療を受けやすくなっています。

 

次ページ「ストレスチェック」の実施が義務付けられた

※本連載は、富田崇由氏の著書『コストゼロで作る小さな会社の健康な職場』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

コストゼロでつくる小さな会社の健康な職場

富田 崇由

幻冬舎メディアコンサルティング

働く人の健康問題に注目が集まっていますが、組織として健康増進に取り組んでいる企業は多くありません。 「健康経営」や「従業員の健康づくり」は必ずしも産業医がいなければできないものではなく、小さな会社でもコストを掛…

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