(※写真はイメージです/PIXTA)

数ある不動産投資のなかでも「低コスト・高利回り」であるとして注目されている、中古アパート経営。ただ、中古物件だけに、設備の老朽化や今後の耐用年数などさまざまな不安があるのも事実です。そこで今回、中古不動産の目利きの専門家集団である一般社団法人レトロフィットジャパン協会の担当者に、中古アパートに投資する際の物件の見極め方や注意点について伺います。

「法定耐用年数=建物の寿命」ではない

「レトロフィットジャパン協会」は、建築物を健全に維持する耐震化事業の推進、レトロフィット技術の構築と普及、および都市の再生も含めた広範囲にわたるアカデミックな活動を通じて社会に貢献することを目的として、2009年11月に設立されました。

 

「レトロフィット」とは、既存建物の耐震性を高め修繕・改修をすることにより、新築時のデザイン思想を維持・展開しながら、建物の長寿命化を図ることをいいます。SDGsの観点からもいま注目されている手法です。

 

同協会は、「いい建物を、きちんと手入れして、長く大切に使う」という社会ニーズに応えるため、総合的な「レトロフィット・コンサルティング」のもと、顧客の要望に応じて「建物投資価値評価」「耐震補強」と「建物環境管理」を組み合わせた「レトロフィット・メソッド・ソリューション」と個別のサービスを提供しています。

 

築30~40年の中古アパートに投資するうえで、不動産の素人である投資家は物件のどこに注意すべきなのでしょうか。一般社団法人レトロフィットジャパン協会の担当者によると、まずは前提として「建築物の耐用年数における考え方」を知っておくことが重要だそう。

 

担当者「建築物の耐用年数には、『機能的耐用年数』、『法定耐用年数』、『経済的耐用年数』、『物理的耐用年数』と種類があり、私たちはそれらを総合的に評価して目標耐用年数を設定します。ファシリティマネジメント(建築、設備、土地、環境等のトータル管理)の観点では、施設の長寿命化に向けて計画的な保全を実施することにより、法的耐用年数を上回る年数を目標に設定することができます」

 

「機能的耐用年数」とは、使用目的が当初の計画から変わったり、建築技術の革新や社会的ニーズに対して陳腐化したりする年数、つまり内装や設備などを一新し、現在のニーズに合わせなければならなくなったときまでの年数のことを指します。

 

次に「法定耐用年数」とは、固定資産の減価償却を算出するために税法で定められた年数のことで、これが一般的に知られている耐用年数です。

 

また、「経済的耐用年数」とは、物理的・機能的視点だけではなく、市場性の視点を含め、経済的に市場性を有するであろうと考えられる期間のこと。

 

なお「物理的耐用年数」は、建築躯体や構成材が物理的あるいは化学的要因により劣化し、要求される限界性能を下回る年数、つまり建物が壊れてしまい、これ以上は使えないという段階までの年数のことです。

 

担当者「現在、建物の市場価値というのは、『法定耐用年数』をベースに決まっており、木造の法定耐用年数は築22年、RC造だと築47年と定められています。しかし、これはあくまでも固定資産税の減価償却の年数であって、実際の建物の寿命とは異なります。

 

木造の建物でも、築22年で倒壊するようなことは一般的にありません。実際の建物は『経済的耐用年数』や『物理的耐用年数』によって評価できるのです」

 

本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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