購買力の低下がデフレを生む負のループ
国別の経済状況をより詳細に把握する指標の1つとして「一人当たり購買力平価GDP」があります。これは各国で異なる物価水準の差を修正して、より実質的なGDPの比較が可能になるというもの。
IMF(国際通貨基金)が公表した2021年の国別ランキングを見ると、日本は36位。
アメリカは9位、ドイツは20位など、他の先進国と比較すると日本は下位にある一方で、名目GDPでは日本を上回る中国は74位。単純なGDPの比較からはわからなかった順位が見えてきます。
バブル崩壊後の1990年代以降、日本では「価格破壊」という言葉が浸透するなど、経済成長が低迷していきました。「失われた30年」とも呼ばれる1990年~2020年の物価上昇率を見ても日本の物価はほぼ横ばいとなっています。
物価が上がらずいろいろなものが安く購入できるのは、消費者にとって大きなメリットにも見えますが、物価が上昇しない分、企業は利益を削らざるを得ないため、賃金も上がりません。
賃金が上がらなければ、人々はより安いものを求める、さらにそれが賃金上昇を阻む、という悪い循環に陥ってしまったのです。これを「デフレスパイラル」と呼びます。
そして、日本人は貯蓄が大好き。給料が上がらない中で将来への不安を解消するためにお金を貯める人が増え、消費に回るお金がさらに少なくなってしまいました。
特に60歳以上の貯蓄額は高く、「貯蓄過剰」とも言われています。
いまや韓国に抜かれている、日本人の平均年収
OECD(経済協力開発機構)が公表する世界の平均賃金データによると、2021年の日本の平均年収は433万円でOECD加盟国35か国中22位。
日本の平均年収は直近20年で1%未満の伸びにとどまった一方で、お隣の韓国は40%を超える伸びを示していて、OECD加盟国の中では19位。日本はいつの間にか韓国に抜かれてしまっているのです。
日本と韓国とでなぜこのような差ができてしまったのでしょうか。その要因として独特の雇用慣習が挙げられます。
日本の労働基準法の下では正社員を解雇したり賃金を下げたりすることが難しいため、企業は好業績を上げたとしても基本給にはなかなか反映せず、賞与など一時金の形で支給することが多くなりました。
また雇われる側も給与が増えることよりも安定した雇用を重視する傾向が強まり、ある意味では両者のニーズがマッチしたとも言えます。
また、バブル崩壊やリーマン・ショックなどの経済危機を経験し、企業はできるだけ多くの現金(内部留保)を手元に置いておくようになりました。
2020年度の資本金10億円以上の大企業の内部留保は計466.8兆円となり、過去最高額を更新しています。一方韓国企業は業績向上の成果を労働者に積極的に還元していることもあり、平均年収が大きく増加したと考えられます。