なぜ遺産分割で揉めるのか…「不動産の性質」
相続には不動産が大きく関係します。というのも、相続対象となる資産の大半を不動産が占めているからです。[図表1]を見てみると、土地と家屋を含めた不動産が相続財産の約40%を占めていることが分かります。
平成22(2010)年の土地・家屋合計に比べるとその割合は小さくなっていますが、依然として不動産が相続財産のうちの大きな割合を占めていることには変わりがありません。不動産には他の資産にはないような大きな特徴があります。
まず、規模・形状、道路や隣地との関係、傾斜等々、不動産を形成する構成要素は常に多岐にわたり、全く同じ不動産は二つと存在しません。また、それぞれの不動産の価値はその不動産が持つ特徴が複雑に絡み合って形成されます。たとえ同じような規模・形状の隣どうしの土地であっても、資産価値まで同じとはいえません。
また、不動産は簡単に分割することができません。特に土地の上に建物が建ってしまっている状態にあると、分割は非常に困難になります。うまく分割したように見えても、分割後のそれぞれの不動産の価値を見てみると、うまく分割されていない場合があります。
例えば、[図表2]のような形状の土地があり、これを二等分したい場合、A案を考えます。
ただ、A案では間口と奥行のバランスが悪く、建物を建てることが難しくなってしまうので、B案を検討することになります。ところがB案では分割した土地の形状が全く違うので、相続人がそれぞれどちらを取るか? 問題になります。
相続において、相続人の誰がどの不動産を取得するのか、その配分を考えたり、一つの不動産を分割して相続させたりするのは、思っているよりもずっと難しいのです。そのため、不動産を分割せずに共有にしてしまうケースが多くあります。しかし、共有は先に書いた事案の通り、問題の先送りに過ぎず、むしろ問題を解決困難なものにしてしまいます。