社会におけるマネジャーの存在意義
下記は、2019年にリクルートワークス研究所が公表したマネジャーへのインタビュー調査をふまえた4つの提言です。
1 部下への指導にこそ、ふんだんに時間を使うこと
2 思い切ってメンバーに任せる
3 本来業務に集中できる環境整備を怠らない
4 顧客への過剰なサービスはやめよう
この調査によれば、マネジャーの各行動と部署の目標達成率との関係をみると、マネジャーが部下に対する個別指導に多くの時間をかけることが、その部署の業績に良い影響を与えることがわかったそうです。
一方で個別指導の時間をかけても、マネジャー本人の労働時間や部下の労働時間に影響はないとしています。マネジャーはそれ以外の業務にかける時間を減らし、部下はマネジャーからの個別指導により、業務の処理時間を短縮できているようです。
この提言では、プレイングマネジャーであってもマネジャーの長時間労働が必ずしも担当部署の高い業績につながっておらず、マネジャーの本来の業務は部下の個別指導であると結ばれています。
この調査が示唆するのは、マネジャーによる1対1の指導(対話)が、主体性や自己管理能力、実行力など、部下の非認知能力の育成につながる可能性があるということです。
提言にあるようにマネジャーの役割は人材育成であると改めて再認識することで、企業における人材育成の道筋がみえてくるのではないでしょうか。また、本来業務に集中できる環境整備を進め、顧客への過剰なサービスをやめることも重要な政策といえるでしょう。
海老原嗣生氏はその著書『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』で、日本の労働現場を「二神教」社会と表現しています。
神様のうちの一人は上司(マネジャー)、もう一人の神様はお客さまです。顧客からの要望への非生産的な配慮が、残業を増やし労働環境を悪化させているとしています。
神様(顧客)からの要望の例として、営業時間外での打合せやメール応対、そして現場レベルだと商品の過剰包装等があげられるでしょう。過剰包装が行われているのは、少しの傷やへこみでもクレームの対象とされてしまうからです。そのためスーパーでは農家直販コーナーを除けば、まっすぐなきゅうりがビニール包装で売られています。
ささいなクレームをなくすために、本来不要な多くの経費および労働コストがかかっているのです。
しかし、近年SDGsが叫ばれるようになり、神様(顧客)の意識も少しずつ変化しているといえるでしょう。