(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症になったら自分に、あるいは家族にどういう影響が出るか、ちゃんと知っているだろうか。認知症になると「自分のことは自分で決める」が、まったく通らなくなる。そのため、家族に大きな負担をかけないためにも、ぜひ事前に対策をしてほしい。行政書士であり静岡県家族信託協会代表の石川秀樹氏に詳しく解説いただく。

株式取引が止まらない

【証券】

株券等の保護預かりに関する取引

(銀行の項で書いたように)株式や債券、投資信託などを売買できなくなる。有価証券はずっと変動し続ける(運転士なしの列車に乗っているみたいだ)。

 

【年金等/定期的な収入の受領や費用支払いに関すること】

家賃・地代・年金・障害手当金その他の社会保障給付などの受領及びこれに関する諸手続き

公的年金は金融機関に振込まれるから問題ないと思えるが、年金を受け取るには需給のための手続きをしなければならない。これは認知症になると至難の業となる。第一、通帳に振込まれた年金を、誰が引き出すというのだろう。

 

家賃・地代・公共料金・保険料・ローンの返済金などの支出及びこれに関する諸手続き

支払うのもけっこう難儀だ。督促状はしきりに届けられるが、一切本人に見られることなく、ゴミの山に埋まっている。税金などの滞納だと、いずれ裁判所から競売開始の手紙が舞い込むことにも。でもその意味さえわからない本人は……。

家が売れない、改修もできない

【不動産(自宅)】

新築・建替え・大幅修繕・改築・部屋のメンテナンス(請負契約の締結・変更・解除)

すべて「契約」が伴うから、オーナーが認知症になっていると何もできない。この苦境は、もちろん「収益不動産」でも同じ。というより、いっそう深刻だろう。

 

売却

賃貸所有者が認知症になると自宅を売ることはできない。

 

これは、不動産が共有されている場合はもっと深刻だ。ほんの数パーセントの持分を持っている人の認知症でも、その不動産は売れなくなる。共有不動産の処分は、共有者全員の意思判断能力が健在でなければ、買主と契約できないし、司法書士に登記を依頼しても断られてしまう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)
 

収益不動産

入居者との賃貸借契約の締結・変更(更新)・解除

新規の入居者を確保できなくなる。

 

資金の借入担保権の設定/登記/借地契約の締結・変更・解除/借家契約の締結・変更・解除

入居者を確保するために建替えたりメンテナンス、補修をしたくてもできない。借入も登記もできない。

 

不動産の贈与(名義書き換え)

不動産の名義書き換えは、書類1つでできるわけではない。売却か相続か、あるいは贈与という事実がなければ、不動産の名義は換わらない。不動産オーナーが高齢になり、子などに代替わりしたいと思ったら、まず贈与を考えるのではないだろうか。しかし「贈与」は、双方の意思が一致しなければできない。

 

ではオーナーの意思は? 認知症で確認できない。となると贈与は成立せず、言葉巧みに司法書士が登記させようとしても、司法書士がオーナーの様子を見れば、登記事務を決して引き受けないだろう。オーナーが認知症になると、代替わりしたくても、それは不可能だ。

経営が完全に止まる──

【経営に関すること】

経営判断

(この項はオーナー社長を想定する)認知症が深刻化すれば、もちろん経営判断という「高度な仕事」はできなくなる。社長決裁ができない。

 

株主権の行使

前段のことと同じことを意味する。会社の最終的な方向性を確定するには株主総会での承認が必要だが、自社株式の大半を持つオーナー社長が認知症になると議決権を行使できない。つまりオーナー社長がボケると経営は止まる。

次ページ遺産分割/放棄もできない

※本稿では、「できないこと、後見人として実行すべきではないこと」には赤いマーカーを付けている。

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