“駆け込み特例”はキケン…事業承継の「目的」を考えて
このように事業承継税制のメリットはとても大きいものの、「税制を利用したい」という目的で焦って事業承継を進めるのは、非常に危険です。
現に、とりわけ相続税や贈与税が猶予されるという魅力は大きく、そこに注目するあまりに「とりあえず事業承継をしよう」という「駆け込み特例」になるケースが多く見られますが、先に述べたように事業承継とは、会社をより長く社会に存続させ、従業員や取引先などのステークホルダーの幸福につなげるために必要な手続きであることは、しっかり意識しておかなければなりません。
現に、「税が猶予される」という目先の金銭的なメリットに目を奪われて事業承継を安易に決断し、結果として残された従業員や取引先、ひいては親族までもが悲惨な目に遭ったというケースを、私は見てきました。
この制度をきっかけに事業承継を前向きに考えるというのは、とても素晴らしいことですが、その際は必ず、「なぜ事業承継をしなければならないのか」という問いに真摯に向き合っていただきたいと思います。
小形 剛央
税理士法人小形会計事務所 所長
株式会社サウンドパートナーズ 代表
税理士・公認会計士
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