「身体論」から展開するコミュニケーションの基盤、ボディランゲージ
私は、身体はわれわれ人間にとっていかなる意味や価値を持つかということを研究する「身体論」を専門にしていますが、コミュニケーションの基盤はまさに身体にあると考えています。
現代社会においてコミュニケーション力がもっとも重要な能力の一つであることは、ここまでも述べてきました。そのような意見に反対する人はめったにいないでしょう。
ところが、そのようにコミュニケーション力を大事に思っている人たちでも、身体という要素を大事にしている人はとても少ないように思われます。
メディアによるコミュニケーションの落とし穴
現実の社会に目を向けると、身体という要素がないがしろにされているようです。放っておくと、みんなパソコンの前で無言のまま、身体とは別次元でひたすらキーボードを打ち続けている……そんな職場も珍しくありません。
ひたすら無言でキーボードを打ち、仕事上の話もすべてメールで連絡し合うというのは、一見、とても省エネで効率的なコミュニケーション方法に見えるかもしれません。ところが、そういう職場では、情報がなに一つ共有されないまま仕事が進んでいってしまいます。
大きな情報が隣の人間にはなにも伝わっていなかったなどという事態が頻繁に起きますし、会社に行ってもなんとなく殺伐としていて、ノイローゼになったり、会社を辞める人が増えていくはずです。
それは結局、会社内で支えあうコミュニケーションができていないということです。
自分の人生にとっても、あるいは会社全体にとっても、コミュニケーション不足というのは非常に大きな問題です。それは「仕事ができる、できない」を超えて、自分が生きている生活空間を豊かにしていくための、最重要な要素になるのです。
つまり、仕事上のコミュニケーション(言葉を換えれば「効率のいいコミュニケーション」)以外にも、居心地の良さをつくるためのコミュニケーションをとっていく必要があるのです。
私たちは、上手にコミュニケーションができたときに幸福感が得られるものです。そういう意味では、いいコミュニケーションこそ幸福の鍵だと言えるでしょう。
家族がいれば家族とのコミュニケーションでほっとするでしょうし、犬を飼っていたら犬とのコミュニケーションで癒やされるでしょう。一人暮らしであっても行きつけの店があって、そこでいいコミュニケーションができれば「今日もほっとした」と感じられるでしょう。
そういうコミュニケーションの積み重ねこそが、人間本来の姿なのではないでしょうか。
コミュニケーション力があればいろいろなトラブルも未然に防げますし、仮にトラブルがあっても修復が早くなります。
それは仕事でもプライベートでも、どちらでも必要となる力です。人間が生きていくために必要不可欠なものとして、ぜひ会話の技術を習得してください。
明治大学文学部教授
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