
今回は、民事信託の受託者が身内であったり、知識を有さない素人であることから生じる問題点を説明します。※本連載は、税理士・公認会計士の成田一正氏監修、一般社団法人民事信託活用支援機構理事長の髙橋倫彦氏、同機構理事の石脇俊司執筆の『『危ない』民事信託の見分け方』(日本法令)の中から一部を抜粋し、資産家の相続対策、資産および事業承継対策としての活用が期待される民事信託について、その特徴や問題点、起こりうるトラブルへの対処法を見ていきます。
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民事信託の受託者には金融当局による監督がない
(1)民事信託の特徴から生ずる問題点
①民事信託の受託者は身内である
受託者は生身の人間ですので、病気、認知症、死亡等により業務ができなくなる危険があります。また、身内故に不正を働く危険があります。例えば、受託者の利益と受益者の利益が相反する危険がありますので、受益者に対して公平な取扱いができない危険もあります。民事信託の受託者には金融当局による監督がないことも問題となります。
②民事信託の受託者は素人である
民事信託の受託者が、信託財産の取引、管理、運用等の知識・経験がなく、ノウハウがないために、これらを疎かにし、失敗する危険があります。法務、税務、会計等の専門的知識がないため、信託財産の記帳、会計報告、税務の取扱い等を適切に処理することができないことがあります。
③民事信託の受益者は身内である
委託者に相続が発生したときに、感情的な縺れから、遺留分の侵害等を原因として、受益権の承継に関して家族の間に紛争が起きる危険があります。受託者が信託財産を処分し、受益者にこれを分配する際に、受託者の事務が妨害される危険もあります。
④民事信託は自己信託の設定ができる
自己信託では、信託財産が委託者兼受託者の個人資産ですので、分別管理(保全)が徹底しない危険があります。委託者が信託証書(公正証書等)を適正に作成しない危険、受託者が受益者に対する忠実義務を守らない危険があります。
民事信託では対応できない「公益」を目的とする信託
(2)民事信託では対応できない信託
①公益信託
受益者の定めのない信託(信託法第258条第1項)のうち、学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益を目的とするもの(公益信託)は受託者において主務官庁の許可を受ける必要があります(公益信託ニ関スル法律第2条)。公益信託の受託者適格に明文の規定はありませんが、民事信託の受託者が引き受けることはできないと思われます(三菱UFJ信託銀行編著『信託の法務と実務〔6訂版〕』(金融財政事情研究会)P754)。
②税法において、信託銀行等の金融機関を受託者とすることをその信託の非課税の要件とするもの
特定障害者扶養信託(相続税法第21条の4)、特定寄附信託(租税特別措置法第4条の5第2項)、教育資金贈与信託(租税特別措置法第70条の2の2)、結婚子育て資金信託(租税特別措置法第70条の2の3)は商事信託に限定されます。
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