
本連載は、税理士・公認会計士の成田一正氏監修、一般社団法人民事信託活用支援機構理事長の髙橋倫彦氏、同機構理事の石脇俊司氏執筆の『『危ない』民事信託の見分け方』(日本法令)の中から一部を抜粋し、資産家の相続対策、資産および事業承継対策としての活用が期待される民事信託について、その特徴や問題点、起こりうるトラブルへの対処法を見ていきます。
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家族が受託者になれる「自由度」の高い信託
まず最初に、民事信託の特徴について見ていきましょう。
(1)家族が受託者になれる
民事信託には、信託業法の規制がありません。未成年者または成年被後見人もしくは被保佐人でなければ、誰でも受託者になることができます(信託法第7条)。
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(2)信託設計が自由にできる
民事信託の受託者は身内の者で、金融機関ではありませんので、自由な設計ができます。また、信託設定の心理的障害のない自己信託も可能です。自己信託を使えば、譲渡禁止財産を信託財産にして、受益権を譲渡することもできます。ただし、民法の一般原則に基づき、公序良俗に反する信託目的の信託が無効になる他、信託法に次のような制約があります。
①受託者の利益享受の禁止
受託者は、受益者として信託の利益を享受する場合を除き、何人の名義をもってするかを問わず、信託の利益を享受することができません(信託法第8条)。
②脱法信託の禁止
法令によりある財産権を享有することができない者は、その権利を有するのと同一の利益を受益者として享受することができません(信託法第9条)。
③訴訟信託の禁止
信託は訴訟行為をさせることを主たる目的としてすることができません(信託法第10条)。
④債権者詐害信託の取消し、破産管財人の受益権返還請求権
委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、その取消しを裁判所に請求することができます(信託法第11条)。破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを、訴えをもって請求することができます(信託法第12条第2項)。
(3)受託者の自由裁量を大きくすることができる
商事信託の受託者は、その営業政策として業務の画一性を求めますので、最小限必要な範囲の業務の引受けしか行いません。一方、民事信託の受託者は、委託者の家族の事情をよく知っている身内の者ですので、安心して受託者の裁量を大きくして信託の運営を任せることができます。
(4)信託設定は財産の規模や種類を問わない
商事信託の受託者は、その事業採算を維持するために、一定規模以上で、その管理が簡単かつ定型的な信託しか引き受けません。民事信託の受託者は身内の者ですので、信託財産の規模およびその種類にかかわらず受託できます。
(5)信託報酬を節約できる
商事信託の受託者は、信託業務の営業、事務、内部管理体制の維持のコストが高いため、信託報酬が割高です。民事信託の受託者は、信託行為に関し信託財産から信託事務の処理の対価として報酬を受ける旨の定めがある場合に限り、信託報酬を受けることができます(信託法第54条第1項)が、商事信託の受託者のような体制の維持のコストがないため、信託報酬を低く抑えることができます。
ケネディ家の財産を守る「王朝信託」がある!?
米国の経済雑誌のフォーブスの記事よれば、ケネディ家の財産は約10億米ドル(約1,200億円)に上り、多数の入り組んだ信託により管理されているそうです。
拡大ケネディ家は約30家族あり、この中で最もリッチな相続人は駐日大使のキャロライン・ケネディ夫人で、2013年時点で約1億7,500万米ドル(約210億円)を有します。家族の財産はケネディ家のファミリー・オフィスであるジョゼフ・P・ケネディ社が管理しています。同社は政治家および実業家として莫大な財産を築いた、ジョゼフ・P・ケネディが1927年に設立したものです。
彼の子供たちは、大統領になった次男ジョン、司法長官を務めた三男ロバート、民主党の重鎮で上院議員であった四男エドワードが知られています。ケネディ家の信託は、家族が財産を浪費してしまわないように設定され、古くは1936年にさかのぼります。その多くはいわゆる「王朝信託」として遺産税から保護され、将来にわたって存続するように仕組まれています。
(参考:Forbes 2014年7月8日号等)
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