非正規雇用労働者数は「労働人口全体の約40%」に迫る
1955年から1973年まで約20年続いた高度経済成長期、経済成長率(実質)は年平均10%前後の高い水準でした。そして、その高い成長率を支えたのは、経営戦略としての日本型雇用慣行でした。
その具体的特徴は、終身雇用、年功賃金、企業別組合が挙げられます。しかし1990年代バブル後の不況以後、終身雇用を前提とした日本型雇用慣行が人件費削減のため見直され、かわりに欧米型の成果主義が注目されました。
さらに2000年代に入り小泉政権下で労働者派遣法が改正され、製造業および医療業務への派遣が解禁され契約社員、派遣社員、パート、アルバイト等の非正規社員の割合が労働者人口の30%を占めるようになりました。
総務省「労働力調査(詳細集計)」によれば、2020年は非正規雇用労働者数が2090万人に上り、役員を除く雇用者の37.2%となっています。さらに、非正規雇用労働者のうち230万人は正社員として働く機会を得られず、不本意ながら非正規労働を選択したとした回答しています。
久我尚子氏の調査によれば、現在の労働者の年収は、学歴よりも、正規雇用者か非正規雇用者かという雇用形態による違いが大きく、その傾向は男性で顕著であるとされています。この不公平感を是正する政策の一つとして、パートタイム・有期雇用労働法が施行(大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日より施行)され、不合理な待遇差が禁止されました。
不公平感を是正する政策が打ち出されていますが、国がめざす「全員参加型社会の実現に向けた個々人の職業能力開発」を推進するには、企業における人材育成に多くの課題があります。
日本の人材育成は従来、一部の外資系企業を除きこれまで日本独自の新人一括採用と終身雇用システムのもとで、正社員対象かつ、新人―中堅―管理職層といった階層別に行われてきました。そうすることで企業風土に同質化できる人材を効率的に育成できたのは事実でしょう。
しかし非正規雇用労働者数が労働人口全体の約40%に迫るなか、人材育成の在り方にもひずみが生じています。