(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年はロシアのウクライナ侵攻や記録的なインフレ、各国の利上げなど波乱の年となりました。なかでも非常に変動が大きかった為替相場は、投資家の大きな関心事だったのではないでしょうか。今回は、円相場の現況と今後の展望について、世界有数の資産運用会社、アライアンス・バーンスタイン(以下AB)のシニア・インベストメント・ストラテジスト、荒磯亘氏が解説します。

円安は心配不要…「インバウンド」に期待

――強い円でなくなってしまったのは「日本の国力が弱まったため」といわれていますが、そうなのでしょうか? 少し前までは「円安=株高」、輸出企業にとってプラスでポジティブな印象がありましたが、去年の円安は「悪い円安」といわれていますね。

 

荒磯「昨年の円安についてはそこまで心配しなくてもいいのではないかと考えます。冒頭で『為替はバランスだ』と述べましたが、昨年バランスが崩れた最大のポイントは『日本は資源国ではない』という点にあります。

 

輸入物価が上がったり、他国と行っていた貿易をストップしたりするなどといった場合、資源がないことは相当の弱みになります。これが円安の背景にありました。

 

しかし、日本特有の『持っているもの』もあるわけです。代表的なのが、“おもてなし”や“メイドインジャパン”といった『観光資源(インバウンド)』。これについては、ドル円が150円だろうが、130円だろうが外国からみれば『かなり安い』という水準といえます。

 

したがって、タイムラグがありながらも、やがて日本の輸出は回復し、対外収支の状況も和らいでくるのではないでしょうか」

 

――外国人観光客の日本での消費額が増えれば、お金の動きが円高方向に働くということですね。

2023年は「景気減速」のゆくえに注目

――今年の円相場は、どのような点に注目すればいいでしょうか。

 

予想は今後変更される可能性があります。 出所:AB
[図表7]2023年ドル円の注目材料 予想は今後変更される可能性があります。
出所:AB

 

荒磯「2022年は、アメリカが利上げし、日本は金融緩和を続けたため、『内外金利差』に注目が集まりました。為替市場でテーマがこれだけはっきりしているというのは10年に1回ではないかというほど非常にわかりやすい相場でした。値幅も出て、円安に向かいました。

 

では、この円安がそのまま巻き戻されるかというと話は変わってきます。2023年は、判断材料が異なるためです。

 

たとえば日本は、今後物価がどこまで上昇するか、日銀がどこまで金融緩和を続けるか、貿易・サービス収支はどこまで悪化するかなどが材料されるでしょう。また、アメリカは利上げ停止が既定路線ですが、利下げとなると不透明との見方もあります。そしてリセッションの可能性も外せません。

 

このように、日米双方に非常に不確実性が高いたくさんの要素があるのです。

 

なかでも特に、私は『景気減速のゆくえ』に注目しています。なぜかというと、いまマーケットではリセッションが確実視され、年末ぐらいにアメリカは利下げしているのではないかというところまで織り込まれているからです。

 

これは悲観的なシナリオが織り込まれているとも言い換えることができます。もしも景気がそこまで悪くならなかった場合は、円安材料に振れる可能性もあります。

 

いまは日銀の動向に注目が集まり円高に戻していますが、今年後半に振り返った際には『年初はいわゆる“外国資産”を組み入れるチャンスだったのではないか』という可能性もあるのではないでしょうか」

 

<<<【AB’s Market Tips】#4 円相場のゆくえ。円安・円高、どっち?>>>

 

 

荒磯 亘

運用戦略部/ポートフォリオ戦略室長

アライアンス・バーンスタイン株式会社

 

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※本稿は、「【AB’s Market Tips】#4 円相場のゆくえ。円安・円高、どっち?」を参考に再編集したものです。詳細については当該動画をご覧ください。
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