円高か円安か…「2つ」の判断材料
――アメリカは今年「リセッション」といわれていますが、アメリカ側が弱いということは今後は円高方向ということでしょうか?
荒磯「年末には日銀の緩和修正もあり、円高になりました。ただ、アメリカはどちらかというともう利上げの幅を縮め、着地に向かおうと考えています。グローバルに見れば、日銀がどんどん緩和修正を続けられる環境かというと疑問符がつきます。
[図表5]は、日米の金利差です。図中黄色が日本、青色がアメリカです。いま、アメリカが先に利上げをしていますが、日本もキャッチアップするかどうかというような形になっています。
ただこの金利差の絶対水準がかなり開いています。これは、歴史的に見てもかなり差がついた状態です。今後アメリカの景気がよほど悪くなり、図中上に向かっている青線が下に降りてこない限り、この金利差は開いたままです。したがって、円の金利が多少上昇しても、円高圧力につながるかどうかは断言できません」
荒磯「もう1つ判断材料があります。[図表6]を見てください。
『日本の貿易・サービス収支』ということで、図中青色が収支、つまり『対外フロー』です。青色が0よりも下がっていれば『赤字』、上であれば『黒字』ということになります。
右端に着目すると、かつてないほど『赤字』になっていることがわかります。2022年の後半は、毎月2兆円レベルで日本の貿易・サービス業は赤字でした。『毎月2兆円、円を売ってる人がいる』というような環境になっています。これは円安圧力です。
過去、『なにかあったときに円は買われやすい・強い円だ』というようなことが言われました。その時は貿易・サービス収支は黒字が続いて、常に円を買いたい人がいたということです。しかし、いまはそうではなくなっています」
――国際収支の悪化も構造的な円安要因に加わったということですね。