事業承継ファンドにはどのような種類があるのか?
事業承継ファンドといっても、1種類だけではありません。それぞれどのような特徴があり、どのように活用されているのでしょうか?
PEファンド
非上場企業を直接買収するのが『PE(プライベート・エクイティ)ファンド』です。グローバルネットワークの活用や思い切った方針の転換をしやすく、スピード感を持った企業価値向上を実現できます。
PEファンドには、51%以上の株式を取得し経営権の獲得を目指す『バイアウト系』のほか、会社が経営権を維持できる『グロース系』があります。バイアウト系だからといって、必ずしも経営陣の入れ替えが起こるわけではありません。経営陣の入れ替えは手間がかかりリスクが高いため、これまでの経営陣が引き続き主体となっているケースも実際にあります。自社のニーズに合わせたPEファンド選びが重要です。
中小機構によるファンド出資
中小企業の支援を行っている『中小機構』には、3種類の『ファンド出資』があります。
●起業支援ファンド:創業もしくは成長初期の中小企業者が対象
●中小企業成長支援ファンド:成長が期待できる中小企業者が対象
●中小企業再生ファンド:再生に取り組む中小企業者が対象
ファンドからの出資を受けることで、スタートアップの時期に必要な経営の知見を得られ、スピーディーな上場を果たした企業もあります。自社のみでは獲得できない資金と知恵を、ファンド出資によって得られるかもしれません。
地方銀行の事業承継ファンド
近年、事業承継ファンドを設立する『地方銀行』が増えています。経営者の高齢化が進む中、多くの中小企業が廃業の危機を迎えています。地元の中小企業が廃業すれば、地域経済は大きなダメージを受けるでしょう。事業承継ファンドを活用し、中小企業の廃業を食い止め、地域経済の活性化につなげるのが目的です。
銀行が行う資金提供ではありますが、通常の融資と異なり投資後の経営支援を受けられます。たとえば京都銀行であれば、30億円までの出資と京都ネクストファンドからの出資を受けられる仕組みです。
事業承継ファンドに買収される意味
事業承継ファンドによる買収は、対象会社やその経営者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか? それぞれのメリットを見ていきましょう。
対象会社にとってのメリット
対象会社にとってのメリットは、事業の成長や再生を効率的にできる点です。事業承継ファンドが利益を得るには、対象会社の価値向上が欠かせません。そのため事業承継ファンドは、資金だけでなく、経営に関する知識やノウハウの共有も実施します。経営陣が学習することで、効率的な事業成長を実現できるでしょう。
また、外部の人材が経営に参画することによる事業再編も可能です。ファンドに事業承継してもらいたいという場合はもちろん、親族や従業員による承継時のサポートを受けたい場合にも活用できます。
経営者にとってのメリット
経営者には、保有している会社の株式を『現金化』できるメリットがあります。ただし上場していない中小企業の株式には、市場価格がありません。そこで企業価値評価を実施した上で、売り手・買い手の交渉により価格を決定します。しかし客観的な評価は難しく、適正な価格より低い金額で売却しているケースもあるでしょう。
事業承継ファンドは、最終的に株式を売却し利益を得ることを目指します。そのため通常のM&Aで行われる価格付けより判断基準が明確です。投資利回りを重視した適正価格で売却しやすい方法といえます。