DXの「X」、変革とは何か?
DXの“X”は、「変革」を意味するTransformation(Trans)を英語圏で「X」と表すことから「DX」と表記されます。これまで企業は、社会や各業界規制などの変化に対応し、経営改革などを通じて事業を見直してきました。それらの改革とDXのトランスフォーメーション(変革)の違いを整理します。
■「従来の企業の改革」と「DXにおける変革」の違い
従来の改革では、業務プロセス改善やデジタル技術の導入により事業オペレーションの最適化を実施しました。従来の改革は、現時点でのあるべき姿を目指した自社課題の解決が目的であり、「顧客に提供する価値」や「提供の仕組み」を見直す変革ではありませんでした(図表3)。
DXにおける変革とは、デジタル技術を活用して「顧客に提供する価値」や「提供の仕組み」を変えることです。そのために、戦略、マネジメント、組織、データ、といった要素の再設計が必須になります(図表4)。
■一気に変革するか、段階的に変革するか
Transformationという英語には、昆虫が幼虫から姿を変えて成虫になる変態(不連続な完全変態ないし連続的な不完全変態)という意味もあります。DXにおいても、組織を一気に変える急進的変革や、事業持続性を重視した段階的変革があります(図表5)。どちらを採用する場合も、目的は自社課題の解決ではありません。
DXの目的は、①デジタル技術を活用した「顧客に提供する価値」や「提供の仕組み」を見直すこと、②「データに基づいてサービスを改善する仕組み」を作ることです。
段階的変革においては、変革の要素を実現するタイミングも考慮しましょう。カブトムシが成虫になる際、樹上の環境に対応するために、口が樹液を吸える形状になり、空を飛べる翅(はね)が同時に必要となることと似ています。
「顧客に提供する価値」や「提供の仕組み」の変革を伴わないデジタル技術を活用する取り組みをカイゼンDXと呼ぶ場合があります。
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<まとめ>
●DXにおける変革とは、「提供する価値」や「提供の仕組み」を変えること
●変革の対象は、戦略、マネジメント、組織・文化、データ、人などすべての要素
●スピード重視の急進的変革と、検証しながら進める段階的変革が存在
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荒瀬 光宏
株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所 代表取締役、DXエバンジェリスト
慶應義塾大学法学部政治学科、日本政策学校、グロービス経営大学院卒。国内の多くの企業および地方自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を研究・支援してきた立場から、DX成功の要諦について実践的なノウハウを所有する。これからの環境認識をベースに将来のあるべき姿や経営戦略を検討し、その戦略を実現できる組織体制、文化、マネジメントへの変革を含む全社変革プロジェクトを専門領域とする。これまでに、延べ60,000人を超える方にセミナー、講演、研修などを提供。
2017年に株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所を設立、DXの提唱者であるエリック・ストルターマン教授をエグゼクティブアドバイザーに迎え、「DXを通じて日本の競争力を飛躍的に高め豊かな日本を後世に引き継ぐ」をミッションとして活動中。
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