蓄えがないのであれば長く働きましょう…「定年延長」
また、普通預金や定期預金の金利(利息)は、バブル期には年利7パーセントが付くような金融商品もあったが、現在の普通預金の多くは0.001%。定期預金ですら0.002%くらいである。そしてこの僅かな利息にも20%の税金がかかる。どう考えても預貯金での資産形成など不可能である。
およそ40年にわたる就業期間の蓄えにしても、伸び悩む所得と共に、雇用の日本型スタイルとも言われた終身雇用制度や年功序列型賃金の完全崩壊により、安定的・発展的な生活設計が描けなくなってきている。
更には、子供の教育費の増大や介護問題などで、この間の自らの老後に向けた資産の形成自体が困難になってきていると感じる人も多いのではないだろうか。
このような中で出されている政策が定年延長である。「蓄えがないのであれば長く働きましょう」的発想のように感じる。
そして、これを生きがい論が後押ししている。これまでの人生3つの区分を3・0区分と呼ぶならば、現在は、「あと、もう少し働きましょう」の3・3区分、更には、「生涯現役」の4・0区分とも言える。
60歳からの40年余りの人生を、就業期間中のスキルを生かし、退職後の新たなキャリアを形成し収入を得ていく、そんな時代に向かっている。今現在、定年後、本人の希望があれば65歳まで雇用することが企業には義務づけられており、年金支給までの5年間は働くのが当然のようになってきている。
2021年4月、政府の持ち回り会議で、60歳となっている一般行政職員ら国家公務員の定年を段階的に引き上げ、2031年度に65歳とする国家公務員法の改正案が決定された。この改正国家公務員法が同年6月4日、参議院本会議で可決、成立した。
この背景には、高齢化が進む中、働く意欲と能力があるシニアの就業機会を確保することが目的とある。人手不足が慢性化している中、豊富な知識と経験を持つ人材を、引き続き活用したい政府の思惑がこれを後押しした。