「おもちゃ開発人生」で“最も売れなかった商品”から学ぶこと
この本を書いている時点で、18年ほどおもちゃ開発の仕事を続けていますが、そんな自分の歴史の中で最も売れなかった商品が、カプセルトイの「鳥人間」というものです。
「鳥人間」は、手を広げた人型フィギュアのあご部分を細い支柱にのせると、浮いているかのようにふわふわと動くおもちゃです。試作を開発した段階で「この動きは本当に面白い!」と興奮して、商品化を進めることになりました。発売したら、心から謝りたくなるほど売れませんでした。
上の説明を読んだ段階で気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、この商品は、動きを見ないと何がどう面白いのかがまったくわかりません。カプセルトイは自動販売機に挟まれている1枚の説明POPだけを見て、お客さんが「買いたい!」と思わなければ決して売れることはありません。
鳥人間の説明POPには、もちろん動いていない商品写真が乗っていて、「不思議! 浮いているように見える!」というようなキャッチコピーが書かれていました。その自販機を見ても、何が何だかわからないのです。
開発した自分は面白さをわかっていたので、それが伝わるものだと錯覚して、誰も何なのかまったくわからないものを作ってしまったという顚末でした。自分が当たり前の様にわかっているからこそ、重要なポイントの伝え方がおろそかになって、誰にもわかってもらえないということは驚くほどよく起こります。
何も知らない相手にパッと伝わるような見せ方、話し方などを、客観的な視点で考えるようにしましょう。
コラム
当時は猫をモチーフにしたカプセルトイがよく売れていましたが、鳥人間ではなく「空飛ぶ猫」だったら、果たして売れていたでしょうか。
高橋 晋平
おもちゃクリエーター
アイデア発想ファシリテーター
秋田県生まれ。
2004年 株式会社バンダイに入社。第1回 日本おもちゃ大賞を受賞し国内外累計335万個を販売した「∞(むげん)プチプチ」などを開発。
2014年 株式会社ウサギを設立。玩具・ゲームの考え方を活かした事業を企業と共同開発し、発想セミナーやワークショップを全国で実施している。
笑い・遊びのある企画を作り、話題にし、販売につなげることが得意。
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