教育資金贈与が「富裕層の相続対策」になってきたワケ
これまで、教育資金贈与は、富裕層の相続対策として活用されてきました。
なぜなら、孫等に対し、自身が亡くなった後の分まで贈与でき、しかも、そこに相続税がかからないからです。
しかも、教育資金贈与の特例は、「暦年贈与制度(贈与税の暦年課税における年110万円の基礎控除)」とも、「相続時精算課税制度」とも、併用することができます。
ところが、この点が、富裕層のみを税制優遇することにつながると問題視されてきました。そしてついに、2023年度税制改正大綱において、2023年4月以降、制度改定が加えられ、相続税の節税メリットが部分的に失われることが決まりました。
裏返していえば、2023年3月までであれば、相続税の節税効果は享受できるということです。
「使いきれなかった残りの金額」への課税強化
2023年4月以降の新制度における変更点は、以下の通りです。
ごく大ざっぱに表現すれば、孫等が贈与を受けた額を使い切れなかった場合、「ペナルティ」として、その残額にかかる相続税または贈与税の負担を重くするものです。
1. 途中で贈与者(祖父母等)が死亡した場合、その贈与者の相続税の課税価格の合計が5億円を超えるときは、教育資金贈与された額のうち未使用の残額について受贈者(孫等)に相続税が課税される
2. 贈与者が生存し続けた場合、受贈者が30歳に達した際に、未使用の残額について贈与税が課税される
それぞれについて解説します。
◆贈与者が途中で亡くなった場合|相続税の節税メリットが一部なくなる
まず、贈与者(祖父母等)が亡くなったときに受贈者(孫等)が23歳未満である場合や、学校等に在学している場合の扱いです。
現行制度では、使い切れなかった残額について、相続税は非課税です。
ところが、2023年4月以降については、贈与者の死亡時の資産(相続財産)の相続税の課税価格が合計5億円を超える場合、残額について、相続税の課税対象となります。
また、受贈者が贈与者の子ではなく、孫、ひ孫等の場合、相続人ではないので、いわゆる「2割加算」の対象となります。
これは、実質的な「資産制限」を設けるものといえます。
◆受贈者が30歳までお金を使い切れなかった場合|贈与税の負担が重くなる
贈与者(祖父母等)が、受贈者(孫等)が30歳になるまで生存し、かつ、受贈者がお金を使い切れなかった場合、その残額は贈与税の課税対象となります。
ただし、現行制度では、直系尊属(祖父母等)からの贈与について税率が軽減される「特例税率」が適用されています。
しかし、2023年4月以降、「特例税率」の適用を受けられず、「一般税率」が適用されることになります。
使い切れなかった額について、ペナルティが課されるということです。
このように、教育資金贈与は、2023年4月から、相続対策としての意義が部分的に失われることになります。
孫に対するプレゼントとともに、相続税対策としての活用を考えるのであれば、この3月までに行うことをおすすめします。
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