(※撮影= Genza_Design/PIXTA)

阪神淡路大震災の犠牲者のうち、死因の約8割を占めたのが、建物の倒壊による窒息死または圧死です。このことから、大地震で命を失わないためには、「住宅の倒壊を防ぐこと」が最低かつ必須条件といえます。本稿では、住宅の倒壊を防ぐための三つの工法、「耐震」「制震」「免震」について見ていきましょう。建築物等の構造物設計・解析を専門とする谷山惠一氏が「免震工法」を推奨する理由とは?

耐震性能“最高クラス”の「等級3」でも安心できない

実はこの結果は、ある程度予想できたのかもしれません。

 

2004年、住宅実務者向け情報誌『日経ホームビルダー』は、土木研究所(茨城県つくば市)で行った実物大の木造住宅による振動破壊実験を取材しました。この実験は、阪神・淡路大震災で観測した地震波を振動台で再現したもので、建物は耐震等級1(2000年基準)をギリギリ満たすレベルのものでした。

 

その実験の結果、建物の1階と2階を貫く通し柱がくの字に折れてしまいました。試験体の内部には、倒壊防止のためにワイヤーが張り巡らせてありましたが、これがなければ崩れ落ちていたはずです。

 

その理由を同誌では、次のように分析しています(一部省略)。

 

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「建物の1階は、常に2階や屋根を支えている。だが変形が大きくなると、こうした重さを支えるのが難しくなる。変形で柱に角度がつくと、その傾いた側へ重さが寄りかかるからだ。いったん傾いた建物をより傾けようとする力は、角度がきつくなるほど強くなる。変形が進むと、耐力壁などの耐震要素の破壊も進む。耐震要素が破壊され、地震への抵抗力が減った状態でさらに変形が進んで、柱が折れた。これが『等級1』が倒壊したメカニズムだ」

(出典『なぜ新耐震住宅は倒れたか』〔日経ホームビルダー編〕)

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このことからいくら耐震性の高い家でも、いったん柱が傾いてしまうと倒壊の危険があることが分かります。つまり、長時間続く揺れや繰り返す揺れには弱いということです。

 

さらに木造住宅に限っては、4号特例という課題もあります。4号特例とは、300m2未満の木造2階建てといった条件を満たした住宅を4号建築物と呼び、建築確認申請の際に構造関係の審査を一部省略することができるという特例です。

 

住宅を設計する建築士のなかには、この制度を正確に理解せずに、構造のチェックを怠って耐震性能の低い住宅を建ててしまうケースがあります。これも耐震等級1だからといって安心できない理由の一つです。

 

そもそも家というものは、震災時に倒壊しなければ、それだけで安全・安心とはいえません。

 

考えてみてください。震度7の地震が起きた瞬間、あなたは「うちは耐震等級3だから安心」と思っていたとします。ところがその直後に冷蔵庫は倒れ、大型液晶テレビは転げ回り、それによって壁中に大きな穴があく。そして家中がめちゃくちゃになってしまうはずです。

 

例えれば、耐震工法の家は、鳥カゴと一緒です。人間が振り回せば、カゴ自体は頑丈なので損傷はありませんが、中の鳥には強大な力が加わります。上下左右に大きく飛ばされることになるはずです。無傷でいることが難しいと同時に、部屋の中がめちゃくちゃになるので、そのまま今までの生活を再開することは困難になるに違いありません。

次ページ制震工法とは?

※本連載は、谷山惠一氏の著書『もう地震は怖くない! 「免震住宅」という選択』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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