犠牲者「約6400人」、多くが「地震発生後15分以内」に死亡…阪神・淡路大震災に学ぶ「大地震を生き残る絶対条件」

犠牲者「約6400人」、多くが「地震発生後15分以内」に死亡…阪神・淡路大震災に学ぶ「大地震を生き残る絶対条件」
(※写真=カワグチツトム/PIXTA)

大地震に対して必要なのは、「災害が起こったらどうするか」ではなく、「起こる前にやるべきこと」を考え、震災などによる被害、特に死傷者をできるだけ少なくするよう十分に対策を立てておくことです。このような“減災”に各自治体が取り組む中、対震構造の開発・普及に努める谷山惠一氏は、「住宅の安全性」が地震対策のカギになるといいます。かつて起こった大地震を基に、有効な減災対策について見ていきましょう。

阪神・淡路大震災、死亡者の大半が「建物倒壊」に起因

減災の重要性を表す大きなものとして、1995年に発生した阪神・淡路大震災からの教訓があります。この災禍では約6400人の犠牲者が出ました。その主な原因として、火災を挙げる人は多いと思います。テレビなどでは、街が燃えさかる様子を報道することが多かったので、そう感じると考えられます。

 

ところがそれは誤った認識です。国土交通省近畿地方整備局が公表した阪神・淡路大震災の死亡原因を確認すると、およそ約77%が建物の倒壊によって窒息死または圧死しています。

 

また、建物の倒壊や家具が倒れてきたことによる頭・頸部・内臓損傷や外傷性ショックなどによる死亡も含めると約91%にも達します。しかも、その多くが地震発生後15分以内に亡くなっているのです。

 

つまり、震災において最も有効な減災対策は、建物の倒壊を防ぐことなのです。

ただし、「倒壊さえ防げば安全」というわけではない

(※写真=hashisatochan/PIXTA)
(※写真=hashisatochan/PIXTA)

 

減災において重視しなければならないのは、命を守ることだけではありません。生命の維持は最低限として、当然ながら五体満足でケガをしないことも重要です。負傷をしてしまえば、程度にもよりますが、その後の復興活動にも大きな支障となる可能性が生じます。かすり傷一つ負わないのが理想だと思います。

 

震災時の建物被害において、死亡者と負傷者の発生メカニズムは異なります。居住者が死亡する原因の多くは、建物の倒壊による窒息死や圧死です。一方で負傷の原因の多くは、建物そのものの被害ではなく、家具や家電など部屋の中の物体の転倒によるものが大きな割合を占めます。

 

大震災の際は、本棚や冷蔵庫などの重量物が倒れてくるだけでなく、液晶テレビといった「こんなものが!?」という大きなものまでが空中を飛んでくるといいます。そんなものが身体に当たればかすり傷程度では済まないはずです。

 

また、建物に関しては、内装部材の損傷を防ぐことも気をつけなければなりません。

 

2011年の東日本大震災では、学校の体育館などの天井材が崩落する事例が多発し、死傷者も出ました。

 

例えば、都内でも天井材の崩落による死者が出ています。場所は千代田区の九段会館です。この施設は講堂やレストラン、宿泊施設などを備え、完成が1934年という歴史ある建物でした。震災当日は、専門学校の卒業式が行われており、地震の発生により天井が崩落。その結果、2人の尊い命が奪われたのです。これにより九段会館は閉館することになりました。(その後、2022年10月に「九段会館テラス」として新たに開業しています。)

 

このようなことから建物が倒壊しなくても、内装部材が損傷することで人体に危害を及ぼすこともあり得るという認識が広がりました。これから家を建てる人は、その点も十分考慮するべきです。

 

さらに家具が倒れたり、家の中のモノが散乱して室内がめちゃくちゃになれば、たとえ命は助かっても避難生活を強いられることになります。この避難生活にも大きな危険が潜んでいます。

自宅で生活できなくなると「災害関連死」に至るリスク

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そのことが一般に知られるようになったきっかけは、2016年の熊本地震でした。同震災では、200人以上の死者が出ましたが、そのうち建物の倒壊などが原因となったのは約50人でした。そのほかの大半は避難生活で体調を崩すなど、いわゆる災害関連死だったのです。

 

特に高齢者は、震災後に自宅で生活できなくなることの影響が大きく、避難生活を送ることで災害関連死の可能性が高まります。

 

仮に首都直下地震など住宅密集地で大震災があれば、避難生活者は膨大な数になります。その受け皿となる仮設住宅は、間違いなく不足するはずです。そうなれば災害関連死が続出するのは火を見るよりも明らかです。

 

やはり家の倒壊を防ぐことは、命を守るうえでの最低限の条件で、プラスして「自宅で生活を続けられること」=「避難の必要のない家」が減災にとって必須です。

 

要するに減災には、「建物が倒壊しないこと」、「家の中のものが倒れたり飛んでこないでそのまま生活を続けられること」、この2つが非常に有効だということです。

 

 

谷山 惠一

株式会社ビーテクノシステム 代表取締役社長、技術士

 

日本大学理工学部交通工学科卒業後に石川島播磨重工業(現:株式会社IHI)入社。橋梁設計部配属。海外プロジェクト担当としてトルコ・イスタンブールの第1ボスポラス橋検査工事、第2ボスポラス橋建設工事等に参画。第1ボスポラス橋検査工事においては、弱冠28歳でプロジェクトマネジャーとして従事し、客先の高評価を得る。

その後、設計会社を設立し、海外での橋梁建設プロジェクトに参画。当時韓国最大の橋梁であった釜山の広安大橋建設工事などに、プロジェクトマネジャーとして従事。橋梁、建築物等の構造物設計・解析を専門とする。現在は橋梁設計のほか、独自の技術で一般住宅向け免震化工法「Noah System」を開発し、普及に努めている。元日本大学生産工学部非常勤講師。剣道五段。

※本連載は、谷山惠一氏の著書『もう地震は怖くない!「免震住宅」という選択』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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