(※写真はイメージです/PIXTA)

ロシアのウクライナ侵攻で、小麦生産・出荷が大打撃を受けました。しかし、ウクライナから小麦を輸入していない日本で、なぜ小麦の価格が上がるのでしょうか。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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なぜ輸入小麦価格が上がるのか?

■投機資金が翻弄する国際商品市場

 

世界経済は「一物一価の法則」で回っています。一物一価の法則を徹底させるのがグローバリゼーションだとも言えます。

 

話を、もういちど食料の話に戻します。

 

ウクライナ侵攻が始まって、「日本でも食料の値段が上がる」とマスコミも盛んにとり上げました。ウクライナ侵攻があって初めて、食料価格が上昇したというのは間違いで、その前の新型コロナ蔓延のころから上がりはじめています。

 

ただし、食料価格上昇にウクライナ侵攻がまったく関係ないかといえば、そんなことはありません。ウクライナ侵攻も、間違いなく食料価格を押し上げる要因のひとつにはなっています。

 

わかりやすいのが小麦です。日本国内で消費される小麦の9割までが輸入によって賄われています。しかし、ウクライナ侵攻で直接の影響を受けているウクライナやロシアからは輸入しておらず、日本に輸入される小麦は、米国、カナダ、オーストラリアの三ヶ国からのもので大部分が占められています。

 

にもかかわらず、ウクライナ侵攻でウクライナの小麦生産・出荷が大ダメージを受けるというので、日本でも小麦価格が上昇すると大騒ぎです。小麦製品であるパンやパスタ、菓子類などのメーカーは、さっそく値上げに踏み切りました。

 

ウクライナから小麦を輸入していない日本で、なぜ小麦の価格が上がるのか。

 

それは、一物一価の法則があるからです。じつは小麦、大豆、トウモロコシなどの穀物は、原油、天然ゴム、鉄鉱石、金など鉱物と同じく、国際商品市場でドル建てで取引されています。

 

穀物取引の中心はシカゴ商品取引所(CBOT)です。シカゴ市場は先物取引が発達しており、先物相場に引っ張られるカタチで現物が活発に取引されるのです。もちろん、実際の穀物輸出価格は品種や産地の銘柄(たとえばパン用小麦ではカナダ産の1CW〔No.1Canada Western〕、米国産のHRW〔Hard Red Winter〕など)ごとに微妙に異なるのですが、シカゴ相場が国際標準価格となるのです。

 

国際商品市場には先物が欠かせません。とくに穀物は干ばつなど気候変動の影響による豊作、凶作などで需給関係が大きく変わります。現物はその時点での需給関係を反映するので、農家はもちろん、流通商社からパン屋さんなど最終ユーザーにいたるまで、先行きが不安です。現物価格のそうしたリスクを避けるために考案されたのが先物相場で、謂わば保険の手段です。

 

作付けから収穫まで何ヶ月もの先行投資をせざるを得ない農家は、先物相場を基準に事前に出荷価格を確定できるので安心できます。ただし、先物といっても、先行きの見通し次第で相場が大きく変動することに変わりはありません。とくに穀倉地帯を戦場とする戦争、あるいは異常気象などは投機勢力にとってみれば先物を大きく動かすきっかけになるのです。

 

投機に振り回される。それがグローバルな一物一価の法則です。だからウクライナ戦争の影響でヨーロッパの小麦価格が上がれば、その影響を受けて日本でも小麦価格が上昇するのです。

 

次ページ原油など国際商品の高騰は投機マネーの仕業

本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本経済は再生できるか

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田村 秀男

ワニブックス

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