先行CI前月差▲0.5と2ヵ月連続下降、一致CI前月差▲0.4と4ヵ月連続の下降
一致CI3ヵ月移動平均・前月差・2ヵ月累計条件満たし「足踏み」に下方修正
●12月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲0.5の下降になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、消費者態度指数1系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列が前月与度マイナスになった。
●12月分の一致CIは前月差▲0.4の下降になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の4系列が前月差寄与度プラスに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の4系列が前月差寄与度マイナスである。3ヵ月後方移動平均の前月差は▲0.63と3ヵ月連続マイナス、7ヵ月後方移動平均の前月差は+0.43と14ヵ月連続プラスになった。
●最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、21年1月分で「上方への局面変化」に上方修正され、2月分では判断が据え置かれた。3月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正され、4月分~8月分と「改善」の判断は据え置きになっていたが、9月分では「足踏みを示している」に下方修正され、10月分~22年2月分速報値では「足踏みを示している」の判断が継続となった。しかし、生産・出荷関連データの年間補正などがあった2月分改定値では「改善」に戻るための、「3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差の符号がプラス」という条件を満たした。3月分~11月分でも「改善」の判断が継続となった。
●今回12月分で景気の基調判断は、11ヵ月ぶりに下方修正され、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」から、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」になった。前月差は4ヵ月連続下降、3ヵ月後方移動平均の前月差は3ヵ月連続下降となり、3ヵ月後方移動平均・前月差・2ヵ月の累計が▲1.30と1標準偏差の▲1.00以上のマイナス幅になったため、「足踏み」に下方修正されるための「3ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件を満たした。
●「改善」の判断に戻るためには、「原則として3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇、かつ当月の一致CIの前月差の符号がプラス」であることが必要だ。逆に、「下方への局面変化」に下方修正されるには、「7ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」であることが必要だ。目先は「足踏み」になる可能性が大きいと思われる。
●12月分の先行DIは44.4%と景気判断の分岐点の50%を4ヵ月連続下回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、日経商品指数、東証株価指数の4系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの5系列がマイナス符号になった。
●12月分の一致DIは25.0%と景気判断の分岐点の50%を3ヵ月連続下回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率の2系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の6系列がマイナス符号になった。
●なお、12月分の遅行CIは前月差▲0.9と5ヵ月ぶりの下降となった。遅行CI採用系列のひとつ法人税収入の最近の動きは概ね堅調であり、景気が拡張局面を続けてきたことを裏付けている。11月分は91年12月以来30年11ヵ月ぶりの1.6兆円台になった。また22年は4四半期連続で前期比増加となった。
●2月27日発表予定の12月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は2月16日である。また在庫率関連データが2月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。先行DIでの、実質機械受注(製造業)の符号はマイナス符号で加わる可能性が大きいと見る。その場合、残りの符号が不変とすれば、先行DIは速報値の44.4%から40.0%に下方修正されると予測する。
●12月分景気動向指数・改訂値で、一致CIに労働投入量指数が加わる。労働投入量指数は、雇用者数(非農林業)と総実労働時間指数(調査産業計)の2つの系列を掛け合わせて作られている。内訳をみると、雇用者数(非農林業)は労働力調査のデータで前月比+0.1%の増加であることが判明している。一方、毎月勤労統計・速報値の総実労働時間指数(調査産業計)は前月比+0.2%の増加である。したがって労働投入量指数は前月比若干の増加であろう。労働投入量指数の前月差寄与度は現状では+0.03程度になろう。なお、12月分毎月勤労統計・確報値は2月24日に発表されるため、12月の一致CI改定値では確報値が使われよう。また、生産指数関連データは2月14日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データは2月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。12月分の一致DIは速報値で25.0%だったが、新たに加わる労働投入量指数の符号はマイナス符号になるとみられるため、他の採用系列の符号を不変とすると、改定値は22.2%程度に下方修正されると予測される。
●1月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。消費者態度指数、日経商品指数の2系列が前月差プラス、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列が前月差マイナスである。
●また、1月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列では、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の3系列がプラス符号に、中小企業売上げ見通しDIの1系列がマイナス符号になることが判明している。1月分速報値段階の先行DIは33.3%以上88.9%以下になることが確定している。
(2023年2月7日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年12月分景気動向指数(速報値)』を参照)。
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト