「稼げる車」構想…なぜテスラのEVは好まれるのか
テスラはモビリティサービス事業者として非常に面白いポジションにいる。世界的な気候変動への対応から急速に高まるEV需要の増加を捉えて、21年の販売台数は90万台を超えてEVではナンバーワンの販売台数(21年度)となっている(図表1)。
各メーカーがEVを販売しているが、テスラが好まれる特別な理由は何なのだろうか。その理由を説明するために、EVを軸にしたテスラのCASE(コネクテッド:Connected、自動化:Autonomous、シェアリング:Shared、電動化:Electric)の取り組みを見ていきたい。
テスラについて、シェアリングのイメージをお持ちの方は必ずしも多くないかもしれない。しかし、19年4月にイーロン・マスクが突如Twitterでソフトウエアアップデートにより自動運転が完成した際、テスラ車オーナーが使っていない駐車中にロボタクシーとなって勝手にお金を稼ぎ始める可能性に言及したのだ(画像1)。
Twitterでの発信があった直後の投資家説明会でテスラは、自社の優位性と顧客の収益性について紹介した。同社は当時、2020年中の完全自動運転の実用化を目指していた。100万台以上の実際に走行するEVから集まるデータが、自動運転技術の開発に有利になるとしていた。
ドライバーは完全自動運転機能と同時にローンチ予定のライドシェアネットワークで、自らの車をシェアリングネットワークに提供することが可能になるという。例えば、自分が使っていないときはロボタクシーとして勝手に稼いできてくれるということだ。コネクテッドによりドライバーの活動エリアを完全に把握しているので、効果的なマッチングも可能になる。
こうしたシェアリングサービスの提供で走行距離が延びた場合に、車体コストの3分の1を占めるとされるバッテリー寿命やメンテナンスコストが大きな問題になり得る。19年当時、30万〜50万マイルであったバッテリー寿命に対して、テスラは近々で100万マイルに到達するとの見込みを示していた。
ちなみに自動運転のデータの処理に際しての半導体の演算能力、電力の使用効率が大きな差を生むことになるので、テスラは自動運転用のチップの内製化に力を入れている点にも言及している。
これにより、1マイル当たり0・18ドルでライドシェアの運用が可能になり、現存のライドシェアのコストを大幅に低減できるとの見込みを示した。1マイル当たりのコストが0・18ドル、年間9万マイルを走行、そのうち50%は空車回送という前提で、テスラは年間3万ドルの粗利を11年間も計上できると試算している。
これを基にオーナーがテスラ車を購入してからのライフサイクル全体で収支を計算すると、実に15万〜25万ドルの「利益」が出るという。テスラを買うことで、移動もできて儲かるかもしれないというのだ。今後EV×シェアリング×自動運転の時代が到来した際、EVによるロボタクシーが大きなコスト優位性を持つことになる。
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